ブログみよみよ日記

行政が婚活イベントでよいのですか。

11月8日の総務常任委員会で、第2次金沢版総合戦略について報告がありました。

総合戦略とは、各自治体ごとに立てている行動計画のことで、「国のまち・ひと・しごと創生地方創生のこと)の動きを踏まえ、本市の目指すべき将来の方向を定めた今後5か年の行動計画」のことです。地方で、少子高齢化が進んでいるので、なんとか地域独自のことを行い打開せよと国が地方に交付金をつけている取り組みです。

今回の報告は、金沢版総合戦略推進委員会を開催して、総合戦略の進捗状況等について報告し委員から意見を聴取しました、というものです。

報告資料の中に、委員さんの意見が抜粋してつけられており、その中で「出生率だけでなく、生涯未婚率にも注目し、結婚する環境や若い人の結婚に対する意識の変化に鑑みた施策が重要ではないか」という意見がありました。

わたしはかねてから、結婚支援や出生率向上として、行政が取り組んでいる施策の中には、社会情勢や市民の現状と乖離したものがあり、議会でもとりあげてきました。

その中で、金沢市の総合戦略の、「基本目標1 若い世代に優しく、子育ての喜びを分かち合うまちをつくる」とあり、その(2)で「結婚の希望をかなえるための環境づくり」という事業があります。

第2次金沢版総合戦略 9ページ

つまり、「結婚の希望をかなえる」ために金沢市が行っている中心事業は、「出会いの機会を提供(婚活イベント)」することなのです。大学生対象のイベントなども書いてありますが、KPIという評価指標を婚活イベントに置いているということから中心的事業だと言えます。

すでに、お気づきの通りKPIについても「参加者数」でよいのか?という疑問はあるかと思いますが、そもそも私が指摘したいのは、行政に対し市民は「婚活イベント」を求めているのだろうか、行政がやるべきことなのだろうか、という点です。

実は、コロナ禍で近年は出会い系のイベントはできていなかったのですが、今年度は企画があったのです。しかし、人知れず中止となっていました。32名の定員に3名しか応募がなかったそうです。。

やはり行政に対して、市民は「婚活イベント」を求めているのだろうか、行政がやるべきことなのだろうか、です。

わたしの感覚的にも結婚できない・しない理由は「出会い」の問題ではないと感じています。わたしも就職氷河期世代であり高校生のころから、「就職するなら医療系」というようなことを周囲から聴かされ、もちろん思いもあって医療系の大学に進みました。

就職後、地元の同級生に会うと大学や大学院を出ても、正規の就職がないというのをよく聴いています。そして、仕事や給料が安定しないのに、結婚や子育てなんてできないというお声をたくさんいただきます。

ただ、ちゃんとした根拠が必要なので調べました。

というか、行政が予算を投じて施策を行うにはそれなりの根拠が必要です。

そこで、結婚への意識調査です。

H30年度 内閣府「少子化社会対策に関する意識調査」から

①まず、そもそも結婚するつもりのない方の理由として、男女とも「ひとりの方が気楽だから」とあり、ついで男子は「お金がないから」が45.1%となっています。

②つぎに、結婚の意向はあるけど結婚していない方の理由としては、男女とも「適当な相手に巡り合わない」が最も高く、男性ではついで「結婚資金が足りない」32.7%となっています。

もしかすると、この回答結果で「婚活イベントを求めている」と考えたのでしょうか・・ただ、結婚はもちろん相手がいなければどんな条件がそろっていてもできないので普遍的な回答なのかと私なら受け取ります。

そして、わたしが着目したのはやはり「求めている」ことです。

③どのような状況になれば結婚すると思うかという質問には、男性の1位は「経済的に余裕ができること」46.7%、女性では「異性と知り合う機会があること」38.9%となっているのですが、年代別では20~29歳では男女ともに「経済的に余裕ができること」となっています。

④このような支援・環境があれば結婚の希望がかないやすくなると思うか、については「そう思う」「ややそう思う」をあわせて、男女とも「自分もしくはパートナーの雇用機会や収入が安定すること」が最多で、つぎが「結婚後も希望すれば継続して就業できること」「住宅費の軽減などにより結婚後の住宅が確保できること」となっています。

⑤そして、結婚を決めるとき、相手のなにを重視するかという質問には、男女とも「人柄」が最多で、ついで女性では「経済力」となっています。で、どれくらいの年収を求めるかというと、男性では「300万円未満」「収入は関係ない」多いのですが、女性では「400万円以上」が男性に比べ多くなっています。しかし、実際の属性では男性の年収は「100万円未満」が最も高く、「ついで300万円から400万円未満」なのです。つまり、実際の年収の分布と女性が相手に求める年収のずれがあると指摘されています。

R4年版 内閣府「少子化社会対策白書」から

男性の雇用形態別有配偶率をみると、正規の職員・従業員では25~29歳で30.5%、30~34歳で59.0%となっているのに対し、非正規の職員・従業員では25~29歳で12.5%、30~34歳で22.3%となっており、それぞれ正規の職員・従業員の半分以下となっています。

もちろん、結婚は自由意志であることがまず大前提です。

しかし、以上の結果から言えるのは、行政が結婚したい方へ「結婚の希望をかねるための環境づくり」をするのであれば、調査に基づいてやるべきは、「安定した雇用や収入を得られる対策」や「結婚しても続けられる職場環境の整備」、「住宅保障などの生活支援」が必要なのではないでしょうか。

以上のように、総務常任委員会では質問を行いました。

それに対し、市の計画とりまとめの担当課長の答弁は、

「環境が常に変化をしておりますし、市民の皆様方のニーズや思いも環境の変化に応じて変わってきていると思っています。いま、ご指摘のあった婚活事業においては、昨年度はコロナ禍の影響で実施できず、今年度については申し込みが非常に少なかったと聞いていいます。そういった意味では事業当初からくらべて取り巻く環境であったり、若者の結婚しようという手段というか、事業に求めるものも少し変わってきているように思っておりますが、それぞれの事業の所管課が自己評価もしておりますし、今回の委員会についても、関係課の課長がすべて出席していますので、各委員から出た意見も踏まえながら、今後予算編成の中でどういったことが必要なのか、見直しも含めて対応を協議していくものと考えています」でした。

1990年代よりも2000年代は非正規雇用が上昇しています。これも、派遣法など労働の規制緩和路線など構造的な仕組みです。また最低賃金もほかの先進国に比べて低く、最低限の生活も保障されていません。

これらは、主に国の施策ではありますが、本市も市の職員の3割が非正規であり、ほかにも職員数に入らない派遣やバイトで補っています。まずは、わが身自身の安定雇用を行う必要がありますし、医療や福祉・介護などの職種は若い方も多くいますが、お給料が低すぎます。自治体によっては賃金につながる補助を行っているところもあります(金沢市も保育士について住宅手当などあります)。そして、若い世代や働く世代への市営住宅の対象拡大や住宅費補助などもっと考えられる手立てはあります。

場当たり的な対策ではなく、結婚して生活が成り立つような施策を行うよう、そして政治であるようがんばります。

▲ このページの先頭にもどる

広田みよツィッターページ
広田みよフェイスブックページ
広田みよフェイスブックページ
日本共産党中央委員会
日本共産党石川県委員会
日本共産党金沢市議員団
JCPサポーター
© 2010 - 2024 日本共産党 金沢市議員団 広田みよ