来年度からはじまる、子ども子育て支援新制度について、原稿依頼がありまとめました
ので、こちらでもご紹介します。
動き出した子ども子育て支援新制度
2015年1月19日
金沢市議会議員 広田みよ
1.はじめに
- 2012年8月 子ども・子育て支援法成立
- 2013年4月 内閣府に「子ども・子育て会議」設置
- 2014年4月 金沢市に子育て支援制度準備室 設置
- 2014年6月 第1回「金沢市子ども・子育て審議会」開催
- 2014年7~8月 保育事業についてパブリックコメント実施
- 2014年9月議会 幼保連携型認定こども園条例化
- 2014年10月議会 小規模事業所等についても条例化
- 2014年11月 申し込み開始 *例年10月だが遅れる
- 2014年12~1月 学童保育事業の条例についてパブリックコメント実施
- 2015年3月議会 学童保育について条例化予定
- 2015年4月から施行
子ども・子育て支援新制度がいよいよ動き出しました。
上記経過の通り、金沢市でも、独自の条例化のため、2014年6月から子ども・子育て審議会が開催され、パブリックコメントを経て、9月議会でまずは幼保連携型認定こども園が、10月議会では小規模保育事業所等の条例化が行われました。その間、例年は10月から行われる来年度入所の申し込みが、制度策定が遅れ、11月にずれています。そして現在は、学童保育事業(放課後児童健全育成事業所)にかかる条例についてのパブリックコメントが行われており、3月には議会で条例化が諮られる予定です。
私は、保育・学童保育の運動体や労働組合などのみなさんとともに、金沢市の保育水準を下げさせないことを目的として、節目ごとに金沢市へ意見や要望をあげ、子ども子育て審議会の傍聴、パブリックコメントにも参加し、議会でも議論を交わしてきました。
その主な争点と具体的にどう制度化されたのか、今後なにが必要かを次に述べます。
2.幼保連携型認定こども園について
幼保連携型認定こども園とは、子ども・子育て支援新制度で改訂が図られた、教育機能と保育機能を併せもつとされる施設です。
本市では9月に、その設備と運営についての基準が条例化されました。国は、こども園への移行を推奨していますが、本市では、幼稚園36園、保育園112園のうち、幼保連携型認定こども園へ来年度から移行を明らかにしている園は保育園について13園、幼稚園は0園で、まだ様子見という事業所がほとんどです。
その理由は、施設側の実際の運営がどうなるのかわからないという漠然とした不安が大半かもしれませんが、具体的には次のような心配の声があります。①保育園には残った、児童福祉法第24条1項の公的責任がなくなること。②保育に教育が持ち込まれ、午前中を教育に充てるなどすることで、午睡の時間がずれたり、一日を通して行う行事が難しくなり、保育を必要とする子どもの生活時間が大きく左右されること。③学級構成を35人以下として幼稚園の基準にあわせており、保育園から見れば、これまでよりも集団の人数が多くなる。などです。
これらを受けて議会でも、金沢市が各園にこども園への移行を推奨することがないよう、そして移行した園についても子どもたちの安全安心のために引き続き責任を果たすよう確認をしました。
しかしながら、施行後に実際どうなるのかわからない点も多く、現場の調査に取り組む必要があります。
3.保育水準について
保育水準については、児童福祉法上、保育園のみに自治体の公的責任が残されましたが、それ以外の施設は外されたままです。
そして、わたしたちがこれまで危惧していた「小規模保育事業所」の職員の資格要件については、国が示した資格要件を、本市もそのまま条例化しています。A型は全員が保育士ですが、B型は半分が保育士で、あとは県の研修を受ければよく、C型は全員が無資格で県の研修のみでよいというものです。
「本市の保育水準を下げない」という、これまでの市長の答弁からは大きく後退し、子どもの安全をおびやかすものです。見直すべきであると議会でも追及しましたが、「保育の受け皿を拡大することを目的に、国が制度化したものであり、国の基準を基本に条例を制定する必要がありましたので、今回上程をした」という答弁のもと、賛成多数で可決されてしまいました。
給食については、国基準で緩和されてしまった外部搬入を、金沢市では引き続き制限をしていますが、同系列事業所からの搬入は認めるなど事実上の改悪です。これらのことについて、制度施行後も引き続き声をあげ改善していく必要があります。
4.保護者負担について
制度変更で、保護者のみなさんの関心事のひとつとして、保育料がどうなるのか、ということがあります。
新制度では、保育料の基礎算定が、所得税から市民税額に変更となります。全体の保育料は変わりませんが、事実上、上がり下がりする方もいる見込みです。
しかし、「子育て支援」と銘打ってはじめた制度において、さらなる負担は許されませんし、保護者の方からの保育料引き下げを求める声は年々強くなっています。保育料については今後示される予定ですので、声をあげていく必要があります。
また、新制度で心配なのが「上乗せ徴収」の存在です。議会でも質問し、「保育所に導入される上乗せ徴収についてですが、事業者と市の協議の場を通して、適切な運用に努めていきたい。」との答弁を引き出しました。料金を多く払える方が、よりサービスを受けられるというような格差を、保育に持ち込まないよう、引き続き求めていきます。
5.入所制限の緩和
新制度は、規制緩和の意味合いが強い一方で、保護者の要望が取り入れられた部分もあります。
かねてから、多くの声が寄せられていた、親御さんが育児休業中または、妊娠中の、上のお子さんの扱いが大きく変わります。現在3歳以上児クラスの子どもを対象としている、育児休業取得時の継続入所について、新年度からは、年齢に関わらず認められることになりました。また、妊娠を理由とする入所についても、これまでは産前8週間の入所を認めていましたが、妊娠中であれば、妊娠の週数に関わりなく認められることになりました。
また、短時間保育については、保育時間は最大8時間、保育認定に関わる勤務時間も下限を48時間/月と現状を維持させることができました。
6.地域ごとの需要予測
ただし、このように需要を増やすということは事業計画にも影響を及ぼします。本市ではすでに、ニーズ調査を行い、地域毎の需要を掴んでいるところです。そして、需要が増える地域での対応をどうするのかが課題です。認可保育園ではなく、規制緩和した事業所で対応するのかなど不安の声もあり、「既存の認可保育所を基本とした保育サービスをきちんと提供していくべきではないか」と、議会で質しました。「ご指摘のように、まずは安定した保育の提供のためには、既存の保育所を基本とする」という答弁を引き出すことができていますので、引き続き認可保育園の充実を求めていく必要があります。
7.保育士の処遇改善について
しかし、需要は増えても保育士の数が足りません。少ない運営費によって賃金が十分でなく辞める方が多いというのが要因です。また、少ない運営費をやりくりするために、非正規で補う保育所も少なくありません。よって、まずは国が一義的に保育士や調理師等の処遇改善を積極的に行う必要があります。新制度において、保育士の処遇改善が実施される見込みではありますが、抜本的な改善が必要です。
8.学童保育について
学童保育事業(放課後児童健全育成事業)についてはただいま、設置や運営基準についてパブリックコメントを行っているところです。基本は国の基準に準拠しますが、本市は民設民営がほとんどであり、建て替えや改修を行うのは難しいクラブばかりです。よって「当面は適用せずに猶予期間とする」という文面が入っています。
そして新聞報道によれば、84か所ある市内のクラブのうち、利用が100人を超える4個所などを中心に、クラブの分割に向けた補助を設ける方針とのことです。
しかし、現場からは建物を民設ではなく公設にしてほしいという声や、耐震化などの補助を拡充してほしいという声が多く、条例化にあわせて求めていく必要があります。
まだ交付金も増額される見込みではありますが、関連の事業と合わせて交付されるので、
学童保育事業にどれだけ予算が確保できるのか明らかではありません。
指導員の賃金を有資格者並みに、そして保育料も値下げできるよう、学童保育にしっかり
予算配分をするよう引き続き求めていきます。
9.今後の課題
現場や保護者が、待機児解消・保育の充実で求めていたのは、認可保育所の増設や保育士の処遇改善です。
しかし、子ども子育て支援新制度は、地方の現状を細かに見ず、規制緩和と民間参入を狙い、画一的に進められました。
そして本市においては、現場や保護者の声を受けて、市の独自の基準は残したものの、多くは国の規制緩和した基準にほぼ準拠する形で条例がつくられています。そのうえ、設置基準などで厳しくなる部分については、当面は適用しない(できない)ことや、経過措置を設けるとされ、現状は変わりません。総合的には保育の水準低下にほかなりません。
残りの条例化について声をあげるとともに、4月からの施行後も、子どもと保護者、現場に本当に寄り添った制度改善に向けて取り組んでいきます。
また、消費増税に頼らない、教育費や社会保障の予算拡充を引き続き求めていきます