平成28年度金沢市歳入歳出決算認定について 2017年12月15日 広田みよ
わたしは、日本共産党金沢市議員団を代表し、平成28年度金沢市歳入歳出決算認定について、認定できないことを表明し、その主な点について討論を行います。
第1は、地方自治体本来の役割である市民生活と福祉の向上という本来の役割とは逆行する施策が行われていることが決算を見ても明らかなことです。国民健康保険料は平成25年に算定方式が変更され、加入世帯の4割が保険料の引き上げとなった結果、従来の2倍の保険料となるような状況もあり、大変深刻です。滞納世帯は12470世帯、短期保険証が発行されている世帯は2968世帯、保険証の取り上げである資格証明書の発行は1146世帯にのぼっています。
一方、特別会計は6年連続の黒字となり、その黒字額によって平成27年度最終補正で16.5億円の基金を創設しており、28年度も15億8千万の基金残高があります。保険料引き下げの財源は十分にあると考えますし、引き下げが必要です。
また、家庭ごみ有料化の導入に向けて市民へ説明が行われてきましたが、聴いていない市民の方が多く、市民からは納得が得られないほか、ごみの量についても家庭ごみはここ5年でもっとも減り、事業系ごみも増加傾向であったものが減少傾向に転ずるなど、併せて3500tもの減少があった。「説明会を行い市民の意識が高まった」と環境局、市長自らが述べている通り、有料化しなくてもごみは減るということであり、ごみ有料化実施の再検討、基本計画の見直しをするべきです。
また、この決算常任委員会の開始に28年度の一般廃棄物の量が出そろっていなかった点は問題であり、来年からは例年通りに夏の報告を徹底するよう求めておきます。
第2は、このような状況下で大型開発が一段と進められ、予算が執行されました。金沢港の港湾整備事業は大手企業のコマツのために、道路関連を含めた整備事業を行うとして、これまで264億4千万円が投入され、本市の負担分は43億7千万円となっています。金沢の外環状道路に伴う大友、直江、近岡などの区画整理事業も大型事業として進められてきました。
一方で、28年度末で、保育所・認定子ども園の耐震化率は91.6%、学童保育が76.8%と22のクラブが古い民家で運営を続けています。大型開発ではなく、市民の安全安心を守る基本的な事業に振り向けるべきです。
第3は、先端産業を誘致するとして呼び込み型の企業立地が行き詰まって市民負担を押しつけられる一方、伝統産業など本市の地域産業が衰退してきている点も見過ごすことはできません。議論があったように、金沢テクノパークは約280億円を投入しましたが、いまだ4分の1が売れ残り、平成19年に1社が立地して以降、平成28年まで9年間、立地はゼロです。工業用水を維持するために毎年約3,000万円が一般会計から投入されています。
また金沢駅西口にインターナショナルブランドホテルを誘致するとしてオリックスへ土地を売却したが、市民の土地を使って、県外の大手資本を誘致することは許されないし、土壌汚染も見つかり市税を投入することになりました。
地元の伝統産業や製造業、小売業など本来の地域経済に寄与する政策転換が求められていると指摘しておきます。
第4に、この間議論となった施策が、決算上から見ても問題点があると指摘しておきます。
金沢プールが28年度中に完成しましたが、オープン前に飛び込みトレーニング室で事故が起こりました。市の途中段階での建設変更、安全対策の欠如、指定管理者がただちに連絡をしなかったという協定違反など様々な問題点もあきらかになりました。専門有識者による施設の見直しと、指定管理者の契約取り消しが必要です。
そして事業費が当初の50億から膨れ上がり、周辺整備、備品あわせて81億ものプール事業になっています。一方で、市営総合プールの廃止の方向性が出されましたが、市民からは存続を求める声が多く、また、内川スポーツ広場のそり遊びのための人工芝も使用できない状態です。こうした身近な体育施設こそ重要であることを強調したいと思います。
また、小中一体的な整備として、泉小学校、泉中学校建設が進められています。これまで指摘してきたように、古くなった小中学校を新しくしてほしいとの要望を理由に、2つの小学校を統廃合し、小中校の一体的建設へと進めてきました。その事業費は累計で42億に上っています。今後の学校施設の整備計画と実施に当たって、市民の理解と合意を得ていくことを強く求めておきたいと思います。
マイナンバー制度の実施は全国的にも批判が強く、ご配送などさまざまな問題も起こっています。必要性が少ないのもあって、実施の到達点も大変少ない現状にあります。本市の個人番号カードの交付数は28年度末で約3万2千枚、7.1%にすぎません。しかし決算から見ると平成28年度までにで約6億6千万円以上もの税金をこの制度のために投入しています。その多くが、大手電機・通信企業(金沢では富士通、インテック)が受注しています。住民のための制度でないことはあきらかでさらなる利用拡大はやめるべきです。
最後は、職員定数の削減問題です。非常勤職員と臨時職員を合わせると1160人となり、職員の約26.2%に上ります。一方、正規職員が減り続け、平成21年度と平成28年度の決算を比較すると正規職員は101人減り、非常勤職員は317人ふえています。結局、正規職員を減らしてその分を非常勤職員や臨時職員で補うということが続いています。
例えば教育現場では、各学校に配置されていた校務士の定年退職とともに不補充を繰り返し、未配置校が22校にものぼっています。結果的に教育現場への影響が指摘され、議会でもこの問題の改善を求めていますが、引き続きこの分野での職員の削減等が続けられています。ごみに関する業務、学校給食に関する業務でも民間委託化が進んでいるだけに、正規職員の配置を通じて職場の働く環境を向上させ、市民の要望や負託に応えることが何よりも大切だと指摘し、討論を終わります。