金沢市の保護者のみなさんが、小中学生の端末持ち帰りの家庭での負担について、教育長と市長宛に申し入れをおこないました。
目次
- 1 申し入れ項目と回答についてです。
- 2 ①家庭への端末持ち帰りの意義や目的、計画について、各家庭にきちんと説明すること。
- 3 ②公的支援や家庭での準備も整っていない状態のまま、端末の持ち帰りやオンライン登校日など、拙速に進めないこと。
- 4 ③インターネット環境のない世帯へは、学校で一括契約してSIMカードの入ったルーターを貸し出すこと。
- 5 ④就学援助世帯について、オンライン学習通信費を支給すること。
- 6 ⑤生活保護世帯についてはもちろん、経済的に困難な世帯に広く通信費を支給すること。
- 7 ⑥弁償責任に不安を抱いている保護者が多い中、持ち帰りは一層そのリスクが高まります。端末の故障や損傷に対して、教育委員会の負担で保険に加入すること。
- 8 ⑦ケースなど周辺物品について、学校によっては一括購入の案内がありますが、新たな負担にならないようにすること。
- 9 ⑧充電は学校でしかできない状態であり、長期使用の場合、充電器についても貸し出すこと。
- 10 ⑨家庭での利用は、保護者の付き添いがないとできない学年では実施しないこと。
- 11 ⑩インターネットなどを使わせない方針の家庭については相談に応じること。
申し入れ項目と回答についてです。
(前文)小中学生に端末が貸与され学校での使用が始まっています。しかし、教育的効果への疑問もあり、教員の負担増も心配されます。その中で、6月頃より子どもたちが家庭に端末を持ち帰っています。しかし、そもそもなぜ持ち帰るのか明確な目的がわかりません。そして、ネット環境のない世帯は、ルーターの貸し出しはあるものの、各家庭でSIMカードを契約し、料金は負担することとされています。「義務教育の無償」に反し、子どもたちに等しく学習環境が整えられないまま、家庭任せの状況は教育の格差を招きます。また、家庭の子育て方針とのずれや弁償責任などさまざまな問題が考えられます。
家庭への端末持ち帰りについて、こうした疑問の声が多く寄せられています。持ち帰りが必要か見直すべきですし、家庭での準備や支援の仕組みが整わない状態で端末の持ち帰りを進めないでください。
よって、以下のことを早急に実施・検討するよう求めます。
記
※実例報告や、追加発言は口頭でたくさん行いましたが、一部だけ抜粋して掲載します。
①家庭への端末持ち帰りの意義や目的、計画について、各家庭にきちんと説明すること。
回答:
1人1台の学習用端末の活用にあわせ、学校から保護者に「GIGAスクール構想についてのご理解・ご協力に関するお便り」を4月に出した。6月には「長期持ち帰りに向けたお便り」などを通じて、端末活用の目的や持ち帰りの見通しなどを知らせている。これに加え、各学校で学校便りを活用しながらその都度、端末の使い方・目的等についてお知らせしている。夏休み中には各学校でオンライン登校日を設定し、各学校と家庭を結ぶことを予定しているのでご協力をいただきたい。
②公的支援や家庭での準備も整っていない状態のまま、端末の持ち帰りやオンライン登校日など、拙速に進めないこと。
(当日追加質問)学童保育での利用についてはどうするのか。
回答:
端末授業は、感染症・災害等における臨時休業となった際にも、子どもたちの学びを止めないことにつながる大切なことだととらえており、それらに向けた日頃の準備として夏季休業期間中にオンライン登校日を行う。また、ネット環境が整っていない家庭には、モバイルルーターを無償で貸し出している。各家庭において発生する通信費についてはこれまでもご家庭で負担をしていただきたいという説明をしている。学童保育については個別に対応する、絶対に学童でやってというものではない。
③インターネット環境のない世帯へは、学校で一括契約してSIMカードの入ったルーターを貸し出すこと。
回答:
各家庭において発生する通信費についてはご家庭で負担と考えており、考えていない。
④就学援助世帯について、オンライン学習通信費を支給すること。
(実例)あるシンブルマザーで就学援助世帯では、ネット環境がなく、子どもがルーターを持ち帰ってきたが、SIMカードが入っておらず、教育委員会に連絡したら「ご自分で契約してください」と言われ、なんのための就学援助なのかと悲しくなったということ。
(実例)学校のタブレット接続の連絡メールが来ていたので、そこに接続できないことを書いて送ったものの何の返信もなかった。なので仕方なく、「端末を家のwi-fiに接続してアンケートに答えてください」という接続確認の宿題は土曜日に学校の校庭に行っておこなった。
※回答は⑤と一緒に。
⑤生活保護世帯についてはもちろん、経済的に困難な世帯に広く通信費を支給すること。
(実例)生活保護世帯で、もともとは最小限のネット環境しかなかったが、ネット環境があるか問われるアンケートが度々来て、ネット環境がなければ勉強できないのかと思い、3千円あらたに負担して契約を増強した。あらたな負担にならないようにしてほしい。
回答:
④、⑤まとめて。生活保護費、要保護となっている世帯の制度拡充に応じて、支給時期や内容の制度について連携をしなければならない。今後本格的な家庭でのオンラインスケジュールにあわせ、生活支援課と歩調をあわせながら制度について研究していきたい。
追加発言:
生活保護費は法定受託事務なので、教材費として出されているということでよいか。それにあわせて、就学援助も実施に向けて取り組むということか。対象世帯には早くお知らせしてあげてほしい。
回答:
生活保護はそうだ。就学援助は予算措置も必要で、議会にも計上しなければならない。
追加発言:
すでに、経済的理由でネット環境を整備できない家庭がある。すぐに一律契約をして貸し出すなり、手を打ってほしい。現にネット環境の整備ができない家庭はどうしたらよいか。
回答:
学校に相談してください。経済的に無理なのにやってとは言わない。
⑥弁償責任に不安を抱いている保護者が多い中、持ち帰りは一層そのリスクが高まります。端末の故障や損傷に対して、教育委員会の負担で保険に加入すること。
(実例)端末持ち帰りの前にサインを求められた文書では、「家庭が弁償の対応をしてもらうこともある」と書いてあり、各家庭はとても心配している。教育委員会の責任で保険に加入するべきではないか。
回答:
この端末は児童生徒に貸与している。通常の使用の範疇における故障・破損については現在、教育委員会のほうで対応するということになっている。故意による破損等があった場合には、ご家庭での対応になる場合もあるが、個別に丁寧に対応していきたい。
⑦ケースなど周辺物品について、学校によっては一括購入の案内がありますが、新たな負担にならないようにすること。
(実例)「端末ケースを一括購入します」という学校からのおたよりがいくつかの学校で出されているが、必要ならば学校の負担で購入するべきですがどうか。
回答:
学校において端末を収納するかばんなどについては、市販のものを紹介するほか、ご家庭にあるものを使ってもらうことも可能である。必ず学校で購入するものを使わなければならないわけではないことをご理解ください。
⑧充電は学校でしかできない状態であり、長期使用の場合、充電器についても貸し出すこと。
(実例)コロナ陽性者が出て休校の間、端末で課題がたくさん出たので、充電が切れた。充電器は学校にしかないので、どうすればよいのか。家庭で充電が必要ならば、充電器を配布するべきではないか。
回答:
現在、夏季休業中のオンライン登校日も、長くて1時間程度を考えているので、現段階ではフル充電されていれば十分だと考えている。ただ、今後について、長期の臨時休業になる可能性も考えられるので、このアダプターについては、家庭への貸与について考えていきたい。なお、ご家庭にあるスマホなどの充電器で代用可能のものもある。
追加発言:
すでに陽性者が発生した学校で、休業中にたくさんの課題が出され充電がなくなっている。代用できない充電器しかない家庭だった。はやく貸与や支給の検討をしてほしい。
⑨家庭での利用は、保護者の付き添いがないとできない学年では実施しないこと。
回答:
端末の使用方法については低学年の児童でも問題なく操作できるように、学校で授業において操作を通じながら指導していきたい。また、家庭での端末利用にあたっては、学年や学級の進捗度合いに応じた内容で、課題やオンライン授業を行うことは当然と考えている。
⑩インターネットなどを使わせない方針の家庭については相談に応じること。
回答:
学校での調べ学習の場合で、ひとつのツールとしてネット検索などが行われている。またフィルター機能によって教育にふさわしくないサイトにはつながらないように設定もしている。それぞれのご家庭のお考えもあると思うが、個別に端末利用の意義について丁寧にご説明して、子どもたちの学習に有効に活用してもらうよう繰り返し丁寧に説明する。
(所感)端末の持ち帰りおよび、家庭でのネット接続がすでに求められていますが、ネット環境のないご家庭には現在自己負担が求められています。しかし、就学援助世帯については、就学援助制度のオンライン学習通信費(12,000円/月)を利用することができるよう国の要綱は改訂されています。しかし、金沢市ではまだ仕組みや予算が整っていない様子。国が自治体任せなのも問題のようです。
しかし、「義務教育は無償」の原則から外れ、経済的に困難な世帯をさらに追い詰める状況はすぐに改善すべきです。素早い対応と、当面の間は個別にでも、自己負担のないよう対応するべきです。