3月22日、3月議会の最終日に予算や条例などに対し、会派を代表して討論をいたしました。
私は、日本共産党金沢市議員団を代表して討論を行います。
わが会派は、上程された議案53件のうち、議案第62号の一部、議案第64号、議案第68号、議案第69号、議案第72号、議案第73号、議案第79号、議案第80号、議案第81号、議案第82 号、議案第95号、議案第96号、議案第97号、議案第98号、議案第103号、議案第108号、議案第111号の議案17件について、反対です。
その主な理由について述べます。
物価高騰が続いています。
民間シンクタンクのみずほリサーチ&テクノロジーズは14日、2022年度から24年度の3年間の物価高騰により、2021年度にくらべ、家計負担が2人以上の1世帯あたり3年間で28万円増えるという試算を公表しました。市民生活は深刻です。
政府は経済対策として、住民税非課税世帯・均等割り世帯への給付金をすすめていますが、さらに新年度は定額減税として1人当たり4万円の所得税・住民税の1回限りの定額減税が行われます。しかしながら、発表前から世論調査で「評価しない」との回答が6割前後を占め、効果がうすい場当たり的な減税であることを国民は見抜いています。
労働者の実質賃金がピーク時の1996年から64万円も減っているもとで、消費税減税や520兆円を超える大企業の内部留保の活用、正規職員への雇用の転換が欠かせません。
そして、住民に最も身近な本市は、市民生活と営業を守り、地方自治体の本来の役割である市民の福祉向上に全力をあげねばなりません。とりわけ震災を経験した今、震災復旧と今後の災害対策は優先課題です。
全会計で3,429億円の本市新年度予算は、そうなっているとは言えず反対です。
主な点を述べます。
第一に、市民生活と中小企業を守ること最優先の予算になっていません。
まずは、国民健康保険についてです。保険料については、県が標準保険料率を引き上げたことに対し、本市は保険料緩和のために基金を10億円取り崩しましたが、負荷限度額は2万円引き上げました。新年度、国民健康保険財政調整基金にはおよそ12億円残っています。わが党は、国庫負担の増額を求めるとともに、基金を活用し、保険料の引き下げを強く求めるものです。
後期高齢者医療制度は、新年度の保険料について均等割額、所得割率とも引き上げ、一人当たり平均、年間6873円増えるものであり、反対です。
介護保険については、新年度から第9期3年間の保険料は、基金から26億2千万円を取り崩し据え置きとなりました。この保険料には反対しませんが、今後の介護保険会計については高齢化にあって国負担の増額を求めるものです。さらに、新年度介護報酬において、訪問介護事業に支払われる基本報酬の引き下げが打ち出されたことは問題であり、事業者や介護家族がその撤回を求めています。本市も現場の声を国にあげるよう求めます。
子育てについては、基本的な部分である保育料の引き下げが行われず、学校給食費の無償化にも踏み出すことはありませんでした。県内で唯一通院の対象年齢が18歳まで届かない子どもの医療費助成制度についても拡充はありませんでした。質問の中で、あと、4億8千万円で実現できることがあきらかとなりました。ご決断を求めます。
放課後児童クラブ、学童保育については指導員の人件費、家賃補助も大幅に引き上げられました。引き続き待機児解消を求めます。
ご高齢の方から切望されている、補聴器の購入補助制度について予算化はありませんでした。多くの自治体で取り組まれ、高齢者の生活の質や安全につながっています。検討を求めます。
さらに、どのご家庭、事業者でも関係する水道料金についてです。水道事業は、新年度予算でおよそ5億4千万円の黒字を計上、昨年の8億円の黒字に続き、連続の黒字計上となっています。これは、県水の契約水量や責任水量制が引き下げられたことによるもので、本来、市民に還元すべきです。なお、引き続き、県水受水契約の見直しに向けて取り組むよう求めておきます
一方で、大手企業や大型開発のために、巨額の税金が投入されています。
金沢港建設事業については、新年度と最終補正分あわせ6億6000万円にのぼります。これは、大手企業コマツが大型重機を製造し、東南アジアへ輸出するために大型船舶の入港・出港を可能とするために金沢港建設事業として行われてきました。
また、クルーズ船のための施設整備も行われるなど大型開発事業として進められています。2006年度から2026度までの計画の合計額は、463億6千万円であり、そのうち、金沢市の負担金は、88億円にも上る予定です。あわせて多額のクルーズ船誘致策も計上されています。わが党は、こうした一部の大手企業のための多額の税金投入に反対してきました。
都心軸の再整備についてです。都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域として、都心軸エリアを指定し、開発事業を進めるとしています。今後、準備協議会を設立して地域整備方針・素案を策定するとのことです。
これは、金沢駅前の旧都ホテル跡地、武蔵ヶ辻、旧日銀跡地、片町、主にこの4つの区域での開発事業を国と県、経済界が主導で進める大型開発事業です。市民参加と合意がありません。
また、特措法の適用によって、高さ制限や容積率など規制緩和を可能とするもので、これまで本市が市民と共につくり上げてきたまちづくりを根底から覆しかねないもので反対です。
城北市民運動公園整備事業として、金沢スタジアムが完成し、本年2月から供用開始しています。本体工事費総額は、82億2千万円と膨れあがりました。新年度は、旧サッカー場の解体工事や遊具広場の実施設計、南駐車場の整備などで4億7400万円、今後、旧サッカー場跡地に本田クライフコートを再設置するほか、多目的広場を設置するなどしています。こうした事業費の総額は、100億円を超える規模と見込まれます。
第二に、市民の理解と合意のないまま、事業が進められています。
マイナンバーカードです。
個人番号カード交付事務費およそ1億6300万円は、マイナンバーカード普及のための費用やシステム導入、コンビニ交付のための予算です。さらにマイナンバーカードと保険証の一体化にともない、本市では国民健康保険の被保険者証を今年12月2日に廃止するとしています。
マイナンバーカードについて、これまでもさまざまなトラブルが確認され、政府は総点検を余儀なくされました。しかし、総点検終了後もマイナ保険証のトラブルは続いています。
全国保険医団体連合会は、2023年10月以降、マイナ保険証やオンライン資格確認システムでのトラブルを調査したところ、8672医療機関が回答し、そのうちの約6割の医療機関でトラブルがありました。具体的には「名前や住所が正しく表示されない」「資格情報の無効がある」「カードリーダーでエラーが出る」など多岐にわたります。
そうしたことから、国民のマイナ保険証利用率も8カ月連続低下し5%を割り込み、国家公務員でさえ4%代です。
河野大臣は今月13日国会で、「紙に戻るわけにはいけない」と強弁しましたが、現行の健康保険証を廃止しても資格確認書、資格情報のお知らせ、資格申立書など紙が残るどころか種類が増えますし、マイナ保険証保有者にも資格情報のお知らせを送ることになり今より複雑化するのです。
さらに、今回のような大規模災害が起きた際、停電による通信インフラの遮断で、マイナ保険証を使うシステムの利用が困難になるとも指摘されています。
そんな中本市は、医療保険課を、マイナ保険証をすすめるためとして市民局に移管し「保険年金課」としたうえ、マイナンバーカード交付窓口を1階の市民課横に配置するため、「保険年金課」は1階から2階に移動させるというのです。
市民の利便性や皆保険制度の維持ではなく、あくまで国のマイナンバーカード推進のための動きであり、断じて容認できません。保険証の存続とともに見直しを求めます。
また、マイナンバーカードでの職員出退管理の導入がいよいよ進められようとしています。これらに反対です。
なお、歳入におけるサッカー専用の金沢スタジアムにおけるネーミングライツ料収入として3111万円が計上されています。金沢市の公的施設に民間企業の名前を付けることには反対であり、予算に同意することはできません。
第三に、教育についてです。
「デジタル科」の新設についてです。幼少期からデジタル機器が身近にある子どもたちにとって、デジタル機器の有効かつ適切な活用についての学びは必要ですが、「デジタル力」だけを特化し、教科化する必要はあるのでしょうか。教員の負担が増えることも明らかであり見直しを求めます。
学力到達度調査、いわゆる学力テストについてです。
小学3年生の算数と、中学1年生の英語で、教科のつまずきや戸惑いに気づき、授業改善するとしていますが、それは日々の小テストや授業の中ですでに行われていることです。一同にテストを実施することが、教員、児童生徒の負担や圧力になり、競争、点数主義になってしまうのは、全国学力テストの状況をみても明らかであり、反対です。
南部共同調理場(仮称)建設事業費についてです。市内泉本町地内で8000食規模の共同調理場の建設工事や外構工事を本格化する予算です。総事業費は土地取得費用も含めると54億にのぼります。開設されると、鞍月共同調理場、扇台共同調理場、4か所残っていた単独校調理場が吸収されることになります。さらに、今後の計画では駅西・臨海地区に1万1,000食の大規模共同調理場を新たに建設するとしています。巨大な共同調理場ばかりの自治体は全国でもまれです。食育や労働環境、地産地消、災害時の対応などにおいても、単独校調理場を増やすことが望ましいと考え、この事業費には反対です。
第四に職員削減についてです。
新年度7名の職員削減が打ち出されています。66人の職員を減らし、59人の職員を増やすとのことです。金沢市ガス事業・発電事業を民間に譲渡しました。80名の金沢市職員を退職派遣し、3年間で終了するとしてきましたが、その2年目になります。それによって、30名の定数を削減するというものです。また、ごみ収集の現場では定年退職者の不補充として8名の定数削減、森本共同調理場では、民間委託化により、5名の定数削減となります。調理やごみ収集など現場労働者の退職者不補充、民間委託化が進められています。しかしこの震災で、いかに公務員の存在が大切かがあきらかになりました。危機管理課や土木、医療福祉関係はさらなる増員を求めます。なお、会計年度任用職員の待遇改善は引き続き求めておきます。
一方で新年度は、官民連携手法を円滑に導入するためとしてPFI活用ガイドラインの策定や公共インフラ包括的民間委託導入検討費や下水道事業ウォーターPPP導入可能性調査、保健所電話A1サービス導入費など民営化やデジタル化への予算が計上されています。
デジタル技術は、人類が生み出した最新の技術です。地方自治体においてもこの技術を有効に活用して、住民の福祉の増進と自治体職員の労働条件の改善を図ることが必要です。しかし、住民の個人情報や住民の利益が守られず、自治体職員の人手不足を補うどころか削減へと進んでいることは認められません。
第五に、工業用水道事業についてです。
これは、先端産業を誘致するとして始まった工業団地造成事業において、立地した企業に供給する工業用水道事業です。企業立地が完了せず、水利用は、実質3つの企業の利用にとどまっています。この事業は、当初から赤字で、その全額を一般会計で補てんしてきました。新年度予算では、約2千7百万円にのぼっています。市政の失敗のつけを市民に押しつけていることに同意できません。
条例改正の主な点についてです。
議案第95,96号は、障がい者総合支援法等の改正に基づく省令や基準の改正にともなう条例改正ですが、サービス管理者1人あたりの上限を30人から60人に規制緩和する内容を含むことや、法律の改正自体も当事者や現場の声が十分反映されたものではないことから、2つの議案に反対です。
議案第98号は、指定居宅サービス等の事業の基準等の一部を改正する省令に基づく条例改正についてです。他事業所との職務の兼務について兼務可能な他事業所サービスの類型を限定しないことや、これまで兼務を可とする条件「同一敷地内にある」を削除するなどの緩和、ケアマネによる利用者の居宅訪問を月に1回としていたものを、2月に1回はテレビ電話等を利用したものでもよいという緩和、ケアマネの一人当たりの取り扱い件数を、これまで35件としていたものを、最大49件まで可能とするなどの緩和が含まれ反対です。ケアマネ不足を反映するものですが、ケアマネを確保するためには、介護報酬の改善や処遇改善こそ必要です。
次に、陳情についてです。
陳情第7号は、「小中学校の体育館にエアコンの設置を求める陳情」です。新日本婦人の会金沢支部から出されたものです。陳情にある通り、子どもたちの学校生活において猛暑における熱中症への対応、避難所として災害関連死を防ぐために体育館へのエアコン設置は急務であり、この陳情に賛成です。
陳情第8号は、「金沢市の子ども医療費を通院についても18歳まで完全無料化するよう求める陳情」で、同じく、新日本婦人の会金沢支部から出されたものです。現在、金沢市は入院については18歳まで完全無料化が進み市民から喜ばれているところですが、日頃から圧倒的に多いのは通院の機会です。感染症や、けが、アレルギーなど日常的に子どもの命と健康を守るために、通院についても18歳まで完全無料化することが必要であり、この陳情に賛成です。
以上、陳情第7号および8号は、付託された各常任委員会で不採択となり、その決定に反対するものです。
以上で討論を終わります。