金沢市磯部町の城北市民運動公園に整備された「金沢スタジアム」。現在は「金沢ゴーゴーカレースタジアム」の愛称で親しまれ、2024年2月18日にオープンしました。
ツエーゲン金沢のホームスタジアムとして知られていますが、金沢市が整備した公共施設でもあります。
では、なぜ新しいスタジアムを建設することになったのでしょうか。建設計画はどのように変わり、どれくらいの費用がかかったのでしょうか。また、運営方法やネーミングライツ、クラウドファンディングには、どのような論点があったのでしょうか。
この記事では、金沢市議会での議論や市の公表資料をもとに、金沢スタジアム建設の経緯と課題を整理します。
※建設の経緯を振り返る記事です。計画段階の金額や予定と、開業後に公表された情報は区別して記載しています。また、市民の方向けにより分かりやすく下記の記事を書き直したものです。
目次
1.金沢スタジアムとは?
金沢スタジアムは、城北市民運動公園に整備されたサッカー専用スタジアムです。ツエーゲン金沢のホームスタジアムとして使用されるほか、市のスポーツ施設として整備・運営されています。
主な概要は次のとおりです。
- 正式な施設名: 金沢スタジアム
- 愛称: 金沢ゴーゴーカレースタジアム
- 所在地: 石川県金沢市磯部町
- 収容人数: 10,444人
- 開業: 2024年2月
- 指定管理者: 金沢スタジアム共同事業体(代表・株式会社石川ツエーゲン)
施設の詳細は、金沢市の公式ホームページで確認できます。
ここで考えたいのは、スタジアムがサッカー観戦のためだけの施設なのか、それとも市民が幅広く利用する公共施設なのか、という点です。
市が整備した施設である以上、建設費だけでなく、日常的な利用、管理運営、将来の維持費も含めて考える必要があります。
2.なぜ新しいスタジアムが必要になったのか?
もともとあった市民サッカー場
城北市民運動公園には、以前から金沢市民サッカー場がありました。1991年の石川国体に合わせて整備された施設で、観客席は約3,000席でした。
一方、ツエーゲン金沢がJリーグで活動するようになると、試合開催に必要なスタジアムの規模や設備が課題となりました。
2014年6月の市議会では、Jリーグの試合開催に必要な観客席の規模などを踏まえ、市民サッカー場の整備について説明が行われています。
当初は、既存施設を改修する計画だった
2017年ごろに示された計画では、既存の市民サッカー場を改修し、観客席を3,000席から1万席規模に増やす方向で検討が進められました。
つまり、最初から現在のスタジアムを新設する計画だったわけではありません。
その後、Jリーグなどの関係団体との協議を進めるなかで、観客の移動経路や飲食スペース、観戦前後も楽しめる空間などを確保する必要があるとされました。
既存の敷地内では、こうした機能を十分に確保することが難しいとして、2019年に公園内の別の場所に建設する方針へと変更されました。
計画変更によって、建設規模も変わった
計画変更のポイントを整理すると、次のようになります。
| 当初の方向性 | 変更後の方向性 |
|---|---|
| 既存の市民サッカー場を改修 | 公園内の別の場所に新設 |
| 観客席を約1万席に増設 | 約1万人を収容する新スタジアムを整備 |
| 既存施設を活用 | 観客の動線や飲食・交流空間なども考慮 |
この変更には、観戦環境を充実させるという目的がありました。一方で、建設費や工期、周辺施設の整備にも影響するため、計画を変更した理由や費用の変化を市民が確認できることも重要です。
3.建設費はいくらかかったのか?
スタジアムをめぐっては、建設費も大きな論点となりました。
2023年当時の記事では、スタジアム本体の建設費として82億4,000万円、南側駐車場の整備費として9億1,000万円が示され、周辺整備なども含めた総事業費は110億~120億円程度になる見込みとされていました。
一方、金沢市が公表している事業資料には、スタジアム本体工事費の総額として79億8,000万円という数字も記載されています。
これらの数字は、資料の作成時期や対象となる工事の範囲が異なる可能性があるため、単純に同じ金額として比較することはできません。
確認したいのは、次の点です。
- スタジアム本体の建設費はいくらか
- 駐車場や周辺整備などに、いくらかかったのか
- 既存施設の解体や跡地整備に、いくら必要なのか
- 当初の計画から費用が変わった場合、その理由は何か
- 開業後の維持管理費や修繕費を、どのように見込んでいるのか
スタジアムは建設して終わりではありません。長期間にわたって使用する公共施設だからこそ、建設時の費用と、将来にわたって必要となる費用の両方を確認していく必要があります。
参考:金沢市「金沢スタジアム(金沢市民サッカー場再整備事業)」
4.スタジアムの管理・運営は誰が担うのか?
公共施設の運営方法も、建設費と並ぶ重要な論点です。
金沢スタジアムでは、指定管理者制度が採用されています。指定管理者制度とは、自治体が設置した公の施設について、民間企業や団体などが管理運営を担う仕組みです。
金沢市の公表資料によると、指定管理者は「金沢スタジアム共同事業体」で、株式会社石川ツエーゲンが代表団体となっています。
ツエーゲン金沢にとっては、ホームスタジアムの運営に関わることができる仕組みです。一方、市民の立場からは、公共施設として公平に利用できることや、運営の透明性が確保されることも重要になります。
市長が株式会社石川ツエーゲンの取締役を務めていた問題
この点について、私は市議会で、市長が株式会社石川ツエーゲンの取締役を務めていたことを取り上げました。
2022年6月議会では、市長が取締役に就任した理由や、ホームスタジアムとしての受け入れを判断する立場との関係について質問しました。
市長からは、ツエーゲン金沢の活動が金沢市のスポーツによるまちづくりにもつながること、法令上の問題はなく利益相反には当たらないと考えていることなどが説明されました。
その後、スタジアムの指定管理者の募集に関連して、市長が2023年4月25日に取締役を辞任していたことが、市議会での確認を通じて明らかになりました。
この経緯を考えるうえでは、法令上の適否だけでなく、市が公共施設の運営者を選ぶ際に、意思決定の透明性や公平性をどのように確保するのかという視点も必要です。
5.ネーミングライツで施設の名前が変わった
金沢スタジアムには、ネーミングライツが導入されています。
ネーミングライツとは、企業などが対価を支払い、施設の愛称を付ける権利を得る仕組みです。
2023年11月、ツエーゲン金沢から、ホームスタジアムの登録名称を「金沢ゴーゴーカレースタジアム」とすることが発表されました。金沢市の資料では、株式会社ゴーゴーカレーグループがネーミングライツパートナーとなり、契約金額は年額3,111万円、契約期間は2024年2月18日から5年間とされています。
市は、ネーミングライツによって新たな財源を確保し、施設の管理運営を維持するとともに、ホームタウンチームへの支援や応援機運を高めることを目的として説明しています。
一方、私は市議会で、市民の税金などを使って整備する公共施設に企業名を付けることについて疑問を示し、ネーミングライツの導入を見直すよう求めました。
公共施設に企業の愛称を付けることには、財源を確保できるという側面があります。その一方で、市民が利用する施設としての性格や、企業との関係をどのように考えるかという論点もあります。
ネーミングライツを評価する際には、収入額だけでなく、契約条件や収入の使い道、市民への説明も含めて確認することが大切です。
6.クラウドファンディングで施設を充実させる
金沢スタジアムでは、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングも行われました。
金沢市は、寄付金を活用してキッズスペースや多様な観戦席などを整備し、観戦環境を充実させる方針を示しました。ツエーゲン金沢の発表によると、2022年に実施したクラウドファンディングでは、5,639万5,500円の寄付が集まりました。
市は、寄付を通じて市民の参加意識を高めるとともに、より充実した施設を整備するための手段として説明しています。
一方、私は市議会で、寄付した人だけに施設内への名前の掲示などの特典を付けることが、公的施設のあり方として適切なのかを質問しました。
クラウドファンディングには、市民や企業などが施設づくりに参加できるという利点があります。しかし、寄付をした人と、そうでない人との間にどのような違いを設けるのか、公共施設としての公平性をどう確保するのかについては、丁寧な説明が必要です。
7.金沢スタジアムをめぐって、市民が確認したいこと
ここまで見てきたように、金沢スタジアムの建設は、単にサッカー場を新しくするという話だけではありません。
建設計画の変更、費用、指定管理者の選定、ネーミングライツ、クラウドファンディングなど、公共施設の整備と運営に関わる複数の論点があります。
市民の立場から、今後も確認していきたい点を整理します。
① 建設費と維持管理費はどれくらいか
建設時の費用だけでなく、日常の管理、設備の更新、将来の大規模修繕などに、どれくらいの費用が必要なのか。市の財政にどのような影響があるのかを確認する必要があります。
② 市民が利用できる機会は十分に確保されるか
ツエーゲン金沢の試合会場として重要な役割を持つ一方、公共施設として、どのような団体や市民が、どのような条件で利用できるのかも重要です。
利用できる日数や利用条件、利用料金などについて、わかりやすい情報公開が求められます。
③ 運営の透明性と公平性は確保されているか
指定管理者の選定や運営方針、企業との関係について、市民が確認できる情報が公開されていることが大切です。
④ 公共施設としての目的と企業との連携をどう両立するか
ネーミングライツや寄付による施設整備は、新たな財源を確保する方法の一つです。一方で、企業の利益や宣伝と、市民全体のための施設という目的をどう両立させるのか、継続的に考えていく必要があります。
まとめ:建設の経緯を知り、今後の運営にも目を向ける
金沢スタジアムは、既存の市民サッカー場を改修する計画から、公園内に新たなスタジアムを建設する計画へと変更され、2024年2月に開業しました。
ツエーゲン金沢のホームスタジアムとしてスポーツ観戦の場を提供する一方、金沢市が整備した公共施設でもあります。
だからこそ、建設費だけでなく、指定管理者による運営、市民の利用機会、ネーミングライツ、クラウドファンディングなどについても、情報を確認し続けることが大切です。
スタジアムが地域のスポーツやまちづくりにどのような役割を果たすのか。そして、市民の財産として公平で持続可能な運営が行われるのか。
今後も市議会での議論や市の公表資料を通じて、確認していきたいと思います。