11月7日土曜日は、市民とともに自治体業務の民営化について考え、取り組んでいらっしゃる尾林弁護士の「公共サービス民営化を考える」学習会でした。
現在、進められている金沢市のガス・発電事業のみならず、指定管理やPFI(金沢市は未実施)などの、経済界の思惑に沿った民営化は市民サービスを低下させるどころか、命や安全にかかわることもたくさんの事例もご紹介いただきながら学ぶことができました。
以下、わたしの受け止めも織り交ぜた要点です。
※読み進めていただく中で、「公募要件」と出てきます。
10/6に市が出したガス・発電事業の売り渡すための条件である 募集要項 と 最優秀提案者選定基準 両方をまとめた概要はこちら のことです。
※これまでのガス:発電事業民営化の経過を知りたい方はこちらをご覧ください。
パワーポイントまとめ
【公営のガス・発電事業は廃止】
・まず、金沢市のガス、発電事業を「売却」するということは、「公営のガス・発電事業を廃止」するのだということ。
・ほかの自治体で議論しているコンセッション方式のような、所有は自治体で運営を民間というものでもなく、すべてを売り渡すのだということ。
【民営化の経済的特徴とは】
・民営化の経済的特徴は、利益(株式配当、役員報酬)を生み出すために人的経費が減らされるということ。
・人的経費が減らされるということは、非正規化や委託化され、地元市民の直接雇用ではなくなる。
・労働者の処遇が低下、または地元採用でなくなれば、消費購買力は低下、所得にかかわる税収も減少する。
・そもそも、売却先の会社が大手である可能性が高く、利益は本社である県外へ流出する。
【民営化で懸念される事項】
・上記のように、役員報酬等のために労働の質を削って利益を生みださなくてはならないため、どうなるかというと。
・老朽化対策、災害時対応、適正管理はその能力も問われるが、経営判断でケチる可能性がある。すでに民営化で失敗したイギリスなどで前例あり。
・サービスと料金については、公募要件に「一定期間・・現行料金を上限に設定」とあり、つまりは一定期間をすぎれば値上げの可能性もあり、さらにその理由は民間のことであり公開されない。
・行政との連携について、公募要件で「SDGs」というようなフレーズもあるが、環境配慮はコストがかかるのでカットされる可能性がある。・職員は、退職させ派遣ということだが、これまで公的に育ててきた専門性の高い人材を無料同然で民間にわたすことは大きな損失。3年以内復職可能だが、戻ってきてもガス・発電事業は廃止されているので片道切符ではないか。
・金沢市の出資は、3~10%としており経営への口出し権限はないほか、公募要件に「譲渡後から5年後をめどに出資および経営状況確認の継続の必要性を判断」とあり、いずれは出資もなくなる可能性大で完全民営化に。
【コロナで目が覚めた】
・これまで「新自由主義」の政策が、病院や保健所など公的施設の統廃合や予算縮小をしてきた結果が、病院や保健所の大混乱を招いている。
・公共施設やライフラインの使命は、市民の命と生活を守ることであり、もうけを生み出す道具にすることではない。
・イギリスやフランスでは民営化で株式配当は増える一方、市民サービスは低下したという経験から「再公営化」が今のトレンドであり、コロナで拍車がかかる。
・日本が、金沢市がまだ民営化にこだわるようなら時代錯誤とも言える。
よって、「金沢市のガス・発電事業の民営化は、地域経済や、市民の安全安心を脅かすもの」です。市民と行政が100年以上にわたって育んできた経営的にも優良な事業(特に水力発電は先進的な再生エネルギー事業)を経済界のお金儲けの手段にするために手放してはならぬね。