冬の大雪の時期になると多くの市民の方から「市内の除雪をしっかりしてほしい」というご要望をいただきます。
私も議会で繰り返し質問してきましたが、実は金沢市の市道の除雪は北陸の他の県庁所在地である富山市や福井市と比べて、約半分の割合しかされていないのが現状です。
今回は私の過去の議会質問にもふれながら、金沢市の除雪の現状についてご報告させていただきます。
〇金沢市の除雪路線は4割にすぎない。
金沢市において、市が除雪(消雪含む)を行う道路は、市道のおよそ4割であり、あとは市民に任されています。
他都市と比較すると一目瞭然!
金沢市と同じ県庁所在地である福井市、富山市、そして県内の白山市・小松市の情報をグラフ化しました。
金沢市と市道の長さがほぼ同規模の福井市では84.9%の市道が市の責任で除雪されています。富山市は市道の長さが金沢と比べて1000㎞近く長くなっていますが、それでも80.7%が市の責任で除雪されています。
白山市や小松市も7~8割が市の責任で除雪を行っており、それに比べて金沢市の4割と言うのは極端に少なすぎると言わざるを得ません。
この5つの市は人口に対する予算規模が極端に違うわけではありませんので、金沢市の除雪予算が少なすぎることは明らかです。
以下、金沢市の除雪行政の問題点や過去の質問についてまとめさせていただきます。
〇自治体には除雪に対する責務がある
道路法ではこう定められています。
『道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。』
道路法第42条
上記の道路法に対する市の認識について、以下のように質問しました。
問 道路法第42条では、除雪が道路管理者の義務として明示されている。よって、市道の除雪は原則、道路管理者である市が行うよう努めるべきという認識でよいか。(広田)
答 道路法によって努めるということは、市の責務であると思っている。ただ、現実問題として、本市行政だけで全てできるものではなく、民間事業者や市民の力も借りながら努めていかなければならないと認識している。(市長)
2021年3月議会での質問より
つまり、最初から市民の協力を前提として除雪計画を立てているという市の姿勢が、他都市と比べても格段に遅れた除雪計画にしてしまっていると言わざるを得ません。
〇市民・町会頼みの除雪計画
では具体的に金沢市除雪計画の問題点について見て行きます。
金沢市では毎年、道路除雪計画書というのを作成し、それに基づき除雪をおこなっています。
直近の令和2年度はこちらです。画像をタップするとみることができます。
この中に書かれている、除雪の役割分担が次のようになっています。
第1節
(1)市:気象、降積雪条件に応じ、予め定めた計画路線について除雪を行う。
⇒市道の4割(最大)
(2)市民
ア:市民自らの生活防衛のため、(1)以外の路線及び消火栓付近について除雪を行う。
⇒市道の6割(最小)
なお、町会等が行う地域での除排雪活動に対する支援については、第6節1によるものとする。
イ:ひとり暮らしの高齢者世帯や障害がある人のみの世帯等で自力での除雪が困難な世帯への協力等、地域ぐるみの共助による除雪に努めるものとする。
ウ:市が実施する除排雪に関する施策等に協力するものとする。
(3)学校・事業所
ア:学校は、通学路について、地域と連携・協力して除雪を行うものとする。
イ:事業者は、施設利用に必要な道路の除雪を行うとともに、施設周辺の道路について地域と連携・協力して除雪に努めるものとする。
第6節
1、計画路線以外の対応
(1)金沢市除雪機械等購入費補助金
(2)金沢市消雪装置設置費補助金
(3)金沢市地域除排雪活動費補助金(2018年度創設)
⇒地域の町会が除雪を行う際に必要な除雪の機械や消雪装置の設置、除雪費用を補助するもの。
2 市民協働の推進 (1)ボランティア体制の強化 (2)除雪協力デーの活用
つまり除雪計画の多くを町会や住民の方の力で実施してもらうというもの。市の除雪に対する責任を住民に転嫁するもの。
問 最初から市道の4割しか除雪しないという計画は、法の趣旨に反しているのではないか。近隣都市では73~85%の市道をカバーしている状況であることから、民間への機械の貸与や市の道路等管理事務所の拡充など、計画路線を拡大した積極的な道路除雪計画を作るべきだと思うが、どうか。(広田)
答 今後の道路除雪計画の改定に当たっては、委託業者との調整や、町会等からの様々な意見を参考に、委託業者の掘り起こしに努めながら、必要な路線については、計画路線の指定を検討していく。(土木局長)
2021年3月議会での質問
公的な体制の拡充も必要です。
市道の4割を市が除雪していると言っても、市が直接行っているわけではなく、民間業者のみなさんに委託をして行っています。しかし、過去にはもっと市が直接除雪をしていました。
しかし、本市の道路等管理事務所は行革によって、1998年度には全体で40名いた配置が2020年度には13名となり、技能職の人数も34名いたのが7名と、5分の1に減らされている状況です。以前は複数の路線を本市直営で除雪していましたが、今は倉ヶ岳と、緊急的な対応のみ。市は技能職の退職者不補充という方針をとっており、このままでは道路等管理事務所は先細り。公的な体制拡充も必要です。
〇地域除雪はすべて市民負担?
2020年度の金沢市地域除排雪活動費補助金の利用結果はこちらです。
利用町会数:274町会/1346全町会
274町会全部の総額:7781万円 (最も申請総額が大きかった町会:176万円)
274町会の実際申請して受け取った補助額の総額:4236万円
7781万円-4236万円=3545万円 ⇒地域住民が負担(多い地域では176万円-30万円=146万円を負担)
道路管理は市民の税金で行われているものが、市の計画路線にない市道については住民負担。
しかも補助分の4236万円も、有料ごみ袋を市民が買ったお金を積み立てたコミュニティ基金
⇒つまり、全額市民負担
※この制度が使われたのは2020年度がはじめてなので、それまでは全て純粋に町会負担でした。また、町会が業者さんを独自に呼んで除雪するのを見て、市が行っているものだと誤解している方も多くいるようです。あくまで市の除雪は計画路線に認定された道路しか入りませんので、ほとんどの方のご自宅前はされない、もしくは町会で独自にされていると思った方がよいでしょう。
問 市が除雪を行わない6割の市道については、地域で補助制度を使って除雪するよう計画で定めているが、それは道路法の趣旨から逸脱するし、財政上の理由などで制度を使えない町会もある。
また、その補助金は、市民が有料で購入したごみ袋の積立てから出されており、税金以外の新たな負担によっている。そのため、市が市道を除雪できない間は、全額補助するとともに、適用期間をなくすべきと考えるが、どうか。(広田)答 本市の除雪計画に定めた役割分担に基づき、市民協働による除雪に対し、その一部を助成しているが、全額負担は考えていない。適用期間については、実態を踏まえ検討する。(土木局長)
2021年3月議会での質問
まとめ
道路法に除雪も含め、市道に対する市の責任は明確に定められていることや、近隣都市でも委託業者や除雪車、オペレータの確保など厳しい中で、工夫して73%~85%を除雪していることから、金沢市も市民任せではなく、もっと知恵をしぼり、予算をかけて除雪を行うべきです。