10月5日から審議が行われてきた、R2年度決算。わたしは、一般会計・特別会計等決算の担当でした。11月22日が最終日で、認定できない旨の討論を行いました。
わたしは、認定第1号令和2年度金沢市歳入歳出決算認定については、認定できないことを表明し、その主な理由を述べます。
令和2年度は、コロナ禍の1年でした。
本市では、令和2年度末累計で本市の感染者数は916名、お亡くなりになった方が県内では64名でした。医療機関や介護福祉施設、学校、さまざまな事業所、雇用、市民生活に多大な影響が出ました。
市民の命とくらし、雇用を守る予算執行だったのかが問われます。
令和2年度、本市決算の特徴としては、一般会計の決算規模が2300億規模と過去最大となりました。新型コロナウイルス感染症対策、特に特別定額給付金による経費増が大きな要因です。
歳入についてはコロナ禍で税収減を想定し、当初予算829億円から815億円まで補正をしました。しかし、結果は当初予算の829億円近くの822億円まで上昇したのです。市税収入の83.7%を占める3つの市税は、個人市民税・法人市民税・固定資産税です。個人市民税や法人市民税は前年の税収の反映ではあるものの、市民のみなさんや事業所のみなさんがコロナ禍でもやりくりをして納税をした結果と言えます。
そうした歳入と歳出の結果、実質収支は昨年より17億円増加し、こちらも過去最大の33億8,256万円、翌年度繰り越しも16億1,344万円となりました。
しかし、コロナ禍で観光・飲食産業はじめ、多様な職種で営業停止や縮小を余儀なくされ、市民の雇用状況は悪化、生活困窮が増えました。医療や介護、福祉施設は減収する中でも、人々の命と生活を支えるために業務を続けました。黒字が生じるのであれば、もっと年度中にこれらの施設、市民に対し対策をとることができたはずです。
具体的に、制度が活かしきれず不用額つまり黒字にカウントされた事業や、予算を減額したり繰り越しした制度には次のようなものがあります。
主なものとして、観光地域づくり緊急支援給付金は、4月補正で4500万円を計上しましたが10件の利用にとどまり2月補正で4000万円減額しました。飲食業継続緊急支援給付金は、4月補正で3億円計上しましたが、101件の利用にとどまり、2億7千万円が減額されています。2月補正で8億円計上した飲食事業継続特別支援給付金は、1590件の利用にとどまり、1.8億円が繰り越し、4億7千万円の不用額が出ています。
それぞれ、事業収入の減少が30-50%減や50%以上減少を対象とし、観光地域づくり緊急支援給付金は観光協会への加盟が前提とするなど狭き門であったことが問題です。われわれが4月補正当初から申し上げてきたように、対象をもっと幅広くする、給付額を引き上げるなど困窮する事業者の立場に立った制度とすべきでした。
中小企業緊急雇用安定助成金は、国の雇用調整助成金の事業者負担分について、本市が10分の1を手当するというものです。4月補正と6月補正をあわせて1億5千万円計上したものの、年度内の利用は262件にとどまり、1億円が減額されています。県の労働力調査では、令和2年平均雇用者数は13,200人の減、休業者は5,800人増加し、厳しい雇用状況であったことから、市内の企業が雇用調整助成金を使えているのか調査し、積極的な利用を促すべきでした。
観光産業に関わっては、宿泊税について前年比45%減の4億2200万円の税収です。ホテル、旅館の厳しい状況に応じ、宿泊税は停止するなど対応が必要だったのではないでしょうか。
次に、新型コロナ感染症に直接対応された保健所や医療についてです。
まず保健所については、1994年の保健所法の改悪により全国の保健所が半分に減らされました。本市でも3つあった保健所が駅西ひとつになりました。1996年本市が保健所を統廃合する際にわが会派は、「市民の健康と命を守るうえで大切な保健所の削減を行うべきではない」と反対を表明しています。しかし強行に推し進められ、本市は保健所がひとつ、感染症対応の保健師は7名という中で今回の事態を迎えたのです。46万人の人口に対し、7名では対応できず、年度途中に正規保健師を3名、会計年度任用職員として保健師1名、看護師2名を増やし、それだけではもちろん不足するため、福祉健康センターや本庁から保健師、事務などが応援に入りました。しかし、そもそも応援職員にも通常業務があります。令和2年度末で、保健師は正規で10名へ増加、会計年度任用職員は看護師も含め4名へ増加させましたが、臨時もふくめ、保健師などの採用を大規模に行うべきではなかったでしょうか。そして、今後もパンデミックは予想されます。必要な保健師や専門職種の配置を増やし、保健所の機能を強化するよう求めておきます。
PCR検査についてです。
コロナ発生当初は、症状があってもなかなか検査が受けられないといった状況が続きました。徐々に体制が整っていったかと思いますが、結果として行政検査は7440件、医療機関での検査は24,000件とという結果です。行政が主体となって検査を行える体制を整えるよう求めます。
さらに、PCR検査は、国の方針通りに行えば、国の補助や臨時交付金が使え、100%補填されるということが明らかとなりました。しかし、自治体によっては、独自財源で、福祉施設や繁華街など幅広くPCR検査を実施し、市民の不安の声に応え、クラスター発生を食い止めてきました。本市でも、医療・福祉関係、飲食店関係からもPCR検査の幅広い実施を求める声がありましたが、本市は国、県の方針に従った範囲だけの検査にとどまり、独自財源を使ったPCR検査は行いませんでした。保健所をもつ中核市として、独自の力を発揮するべきであったと申し上げておきます。
教育に関わってです。
令和2年度は、GIGAスクール構想に基づき、小中学生1人1台学習用端末の購入や学校の環境整備に、19億2千万円が投じられました。しかし、その一方で家庭にWi-Fi環境がない世帯への対応に遅れが生じています。5月の調査結果でおよそ3500人の児童・生徒の家庭でWi-Fi環境がないというアンケート結果があり、4800台の貸し出し用のモバイルルーターを4500万円で購入しておきながら、年度内にはほとんど配布はされていません。さらに配布をされてもご自分でSIMカードの契約をしなければならず経済的な問題でできない家庭も存在しています。
モバイルルーターに多額の費用をかけながら、活かしきれていないと言わざるを得ず、早急にSIMカードつきのモバイルルーターへの貸し出しを行うべきです。
GIGAスクール構想は、この間、教育への効果もあきらかではなく、教員の負担が増えるばかりと問題になってきました。さらに、保護者の負担が増えたり、環境のちがいで教育の格差が生まれることはあってはなりません。
除排雪に関わってです。
令和2年度は、1月に大雪となりました。2018年のに見直された除雪計画に期待が寄せられましたが、今回もまた市民の生活に多大な影響を及ぼしました。
もちろん、昼夜たがわず懸命に除排雪を行う民間の委託業者のみなさまには感謝を申し上げたいと思いますが、そもそもの問題は本市の道路除雪計画にあります。計画では、本市が行うとしている除雪路線は4割にすぎず、あとの6割は市民や地域が行うものとしているのです。しかし、道路法では第42条において、『道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。』としているのです。あくまで、道路管理者である市が法的な責任をおっており、だからこそ市民は税金を払っているのではないでしょうか。
よって、他都市は本市より、市が行う計画路線割合が高くなっています。同じ中核市では、福井市で85%、今年度の除排雪費用は22億円、富山市は80%で25億円だそうです。対して本市は40%で、9億5千万円の決算額です。
本市の道路管理事務所を縮小ではなく拡充する、リースを活用するなどして、除雪路線を延長するよう求めておきます。
こうした、市民生活に必要なところやコロナ対策がに予算が使われなかった一方で、市民が求めていない不要不急の事業が行われています。
主なものについてです。
まずは、金沢港建設事業です。
令和2年度決算では、事業費およそ49億2300万円、そのうち金沢市の負担金は10億円となり、翌年度繰り越しが7100万円となっています。大浜岸壁での事業は、大手企業こまつの工場を誘致するとして大浸水岸壁の事業が進められてきました。クルーズ船を誘致するための無量寺岸壁改良事業として、岸壁の改良事業と施設整備などの事業が行われてきました。コロナ禍の下で、クルーズ船誘致は困難となっています。
金沢港建設事業費は、令和2年度末で総事業費およそ440億円にのぼり、本市負担は、84億円規模です。このような巨額の税金投入は辞めるべきです。
個人番号カード、マイナンバーカード交付事業です。
個人番号交付事務費として、予算より少し増え、繰り越しをあわせ2億4,700万円となりました。さらに会計年度任用職員を6名増加し交付体制を強化しています。
当時の菅政権が、コロナ危機のもとで給付金などの行政手続きをすみやかに行うためデジタル化が必要だとして、マイナンバーの交付を促進したためです。しかし、特別定額給付金の支給が混乱した原因は、政府の方針が定まらず決定が遅れた上、給付手続きへの利用を想定していなかったマイナンバー制度を無理やり使わせたことにあります。行き詰まったカード普及をコロナ危機に乗じて一気に進めようとするのは強権的なやり方であり認められません。そして、マイナンバーカードにつぎ込む予算と労力があるのならば、コロナ対策に充てるべきでした。
城北市民運動公園整備事業の中で、市民サッカー場の再整備にかかわる事業費です。
令和2年度では実施設計が行われ、1億9844万円の事業費となりました。
この再整備されるサッカー場の建設事業費と関連する少年サッカー場の移転費用などで100億円を上回るとしています。
コロナ禍の下で市民生活、地場産業の状況から考えても、100億円もの事業費を投入するサッカー場の移転・新築は、再検討すべきと考えます。
学校給食の共同調理場についてです。
本市はR2年度、新たな共同調理場の整備に向けて、泉本町地内の用地を5億7883万円で先行取得しました。
本市教育委員会は、「新たな学校給食調理場整備計画」を示し、学校給食調理場施設について、現在17施設を6施設に最大15年間で統合集約するものです。そのために、泉本町を6000食から8000食に拡大、駅西・臨海に11000食と大規模共同調理場を2つ新たに建設し、4つある単独調理場をなくし、鞍月共同調理場と8つある学校併設の調理場を廃止するとしています。大規模化して業務の効率化を優先するのではなく、本市がほこる食の教育、地産地消、直接雇用、災害からのリスクを減らすなど、子どもたちや地域経済にとってよりよい給食にするため、単独方式こそ増やすべきです。
歌劇座の建替え検討についてです。
令和元年度末、令和2年2月の「金沢歌劇座あり方検討懇話会」のとりまとめでは、今回の本市の検討は、「整備区域等に係る課題の解決を図った上で、歌劇座を立て替えるべき」というまとめを受け、令和2年度は技術的な検討が行われ、514万円が執行されました。現地では18mの高さ制限があるにもかかわらず、それを超える30mの建物を検討してみたり、ふるさと偉人館の敷地まで使って検討した中身であるほか、現敷地以外での建設の可能性も示しています。しかし、そもそも歌劇座の耐震化はすでに完了し、10年前には舞台も含め11億で改修したばかりです。現状の利用の多くは、学校行事など市民の利用ですが、市民から建て替えの要望が出たわけではありません。市は200億、300億規模の施設を参考に検討していますが、いま予算を使うべきは市民のくらしです。いま、建て替える道理は全くなく、白紙に戻すべきです。
新しい交通システムの導入検討についてです。
2274万円が執行されました。導入機種検討対象をLRTおよびBRTとして検討・調査していますが、市民がのぞむ、山間部や郊外など各地域で生活するうえで公共交通が不足していることの解決につながるものではありません。また莫大な整備費と維持管理費が予想されることから、見直すべきです。
そのほか、駅西ホテルの周辺整備など、これら不要不急の公共事業ではなく、市民のくらしやコロナ対策にまわすべきです。
人事についてです。
コロナ対応で、保健師や看護師を増やした結果、当初計画よりも定数は7名増加に転じましたが、一方で学校の校務士さん10名が削減され、ごみ収集体制では、同じく7名の削減が実施され、民間委託率が67%へと引きあがっています。
基金についてです。
地域コミュニティ活性化基金は、創設して3年です。以前から、コミュニティに関連すればなんでもメニューにできる都合のよい基金ではないかと疑問がなげかけられてきましたが、令和2年度ではそのメニューが前年度28件に対し、47件と大幅に増え、その中に生活に密着した、地域除排雪の補助金も加えられました。結果、令和2年度の歳出は前年度比1億2360万円増加の4億6214万円となっています。
そもそも、ごみ減量化を目的としたごみ袋の有料化で支払った市民のお金を積み立てている基金であり、ごみが減れば、基金も減っていきます。であるにもかかわらず、メニューを都合よく増やし、しかも除排雪費用まで充てるというのは、市民の理解を得られません。そもそもごみ袋の有料化は廃止すべきですし、この基金についても運用を改めるべきです。
特別会計についてです。
国民健康保険特別会計は、保険収納率は上昇し、黒字がおよそ2億円、基金も31億4千万円まで積みあがりました。であるならば、保険料を引き下げることはもちろん、コロナ禍の特別対応がとれたはずです。ひとつは、資格証明書が発行されている方が、コロナ感染しても受診抑制が起こらないように、675世帯に発行されている資格証を短期証へ切り替えるべきでした。ふたつめは、傷病手当がコロナ禍で設けられましたが、あくまでも被用者のみが対象であり、事業主が受けられませんでした。しかし、2月時点で20の自治体が、事業主も対象にしたり、一時金として支給するなど取り組んでおり、本市でも国保加入者の声に応えて実施べきです。
介護保険制度も、およそ4億5千万円の黒字が生まれ24億円まで基金が積みあがりました。保険料の引き下げや、減免制度の拡充を行うべきです。
さいごに、官製談合事件が発覚した、にし茶屋街緑地整備事業費についてです。
これは令和2年度中に入札と工事が行われました。
全体で2千64万円の事業費のうち、1200万円の土木工事に関して、当時の営繕課の係長が秘密事項の最低制限価格を建設会社に漏らし、見返りに現金と商品券合わせて20万円分を受け取ったとして、加重収賄などの罪に問われ、今月18日に結審しました。
公正公平が第一であるべき公共事業の入札が歪められた事実は決して許されません。市長及び市全体の責任として、組織の体質や職場環境、入札制度などの問題など考えうる限りの原因を検証し、今後二度と起こらないような対策をもとに市民への信頼回復を求めます。
委員会での質疑はこちらです。
※特別会計分は準備中です。
議員に配布された決算資料はこちら