金沢駅前の都ホテル跡地に160m級のビルが開発されると報道されています。
低層フロアに公共スペース(議会ではまだなにも提案されていません)、中層にレジデンス(高級マンション)、上層に富裕層向けホテルを配置などとされています。
公的支援前提、富裕層向けが露骨ですが、さらにこの開発についてはただの民間開発ではないというのがポイントです。
政府は「国全体の成長をけん引する大都市について、官民が連携して市街地の整備を強力に推進し、海外から企業・人達を呼び込むことができるような魅力ある都市拠点を形成することが、重要な課題」として、都市再生特別措置法が制定され、「都市再生緊急整備地域」というものを指定して民間の開発を促してきました。
要するに、人口減などの影響で民間の需要が見込めず、国や自治体が補助金を投じたうえで開発を促すという、開発関係に関わる大手業者のための事業です。

https://www.chisou.go.jp/tiiki/toshisaisei/index.html
金沢市の緊急整備についてサイト
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/toshisaiseisuishin/gyomuannai/1/29490.html
全国で展開され、そのひとつが今回の駅前の開発を含む、金沢駅前から武蔵、南町、香林坊、片町の国道沿い「金沢駅東地域」であり、市が協議会を開いて国へ申請し、2025年7月2日に国から指定されました。
指定までの経緯
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/toshisaiseisuishin/gyomuannai/1/29488.html


https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/2/kanazawaekihigashi_kuiki_color.pdf

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/2/kanazawaekihigashi_houshin.pdf
この指定によって、行政からさまざまな特別扱いが受けられます。高さや容積率の規制緩和、各種減税、さまざまな補助金などの交付です。まちづくりの規範を逸脱し、都心軸にだけ、大手企業が中心となる開発に税金を集中投下するようなやり方が果たして市民のためになるのか、地域内循環につながるのかという点で共産党金沢市議団ではこれまで次のような論点で問題を指摘してきしてきました。
全国的な状況
国の認定を受けた民間都市再生事業は、2015年から全国で166件、都市再生緊急整備地域には、この7月2日、金沢市を含めて55事業が指定されています。そして、大都市をはじめ、各都市で民間大企業、大手不動産、ディベロッパーなどがさまざまな優遇を受けて大規模な開発事業を進めています。

https://www.chisou.go.jp/tiiki/toshisaisei/kinkyuseibi_list/pdf/map_250702.pdf

https://www.chisou.go.jp/tiiki/toshisaisei/pdf/shiennsochi.pdf
日本経済新聞が2023年夏、「ゆがむ官製都市」と題して、「民需なき官製再開発広がる」など、暴走する再開発事業にメスをいれる記事を連載しました。地方都市において、需要のない巨大な再開発ビルの一部を行政が買い取り、補助金とフロア購入で公的資金が二重投入され再開発が成り立っている構図などを明らかしています。
規制緩和
金沢市は、これまで区域ごとに景観形成方針と基準を定め、市民とともに歴史と文化が息づくまちの景観を大切にしてきました。金沢駅周辺は高さ規制があり、60mを超える建物を建築できないことになっています。しかし都市再生特別地区となれば、高さ規制を除外し、容積率も緩和した開発が可能となります。※高さ規制の除外は金沢駅周辺区域のみ
高さ規制の除外には市民的合意がなく、民間事業者の儲ける開発のために景観や文化を損なうことがあってはなりません。市民とともに育んできた景観を守ることこそが行政の責任です。

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/70/8378_01.pdf
税制優遇
税制措置においては、所得税・法人税、登録免許税、不動産取得税や固定資産税・都市計画税の減免などさまざまな優遇措置が行われます。これまでの全国の開発で減免した額は、2020年から2024年の5年間で総額583億円にのぼっています。
市民には税の公平を訴え困窮する世帯からも搾り取っているほか、消費税という不可逆性のある税(所得が低い人ほど負担が重い)を増やしている状況で、大手企業には減税というのは到底理解は得られませんし、金沢市にとっても市税収入の減につながります。
まちづくり
こうした規制緩和や税優遇によって超高層複合タワーが建設され、上層階のマンションが、県外・海外からの投資対象となり、夜間には部屋の明かりがつかないなど住民が住み続けるまちづくりとはかけ離れている実態となっています。また、投機目的での住宅取得や転売によって住宅価格高騰が引き起こされています。
さらに、超高層複合タワーの周辺では、ビル風、太陽の光の遮断など周辺住民への被害も発生しています。さらに、災害に対しても、長周期地震動、火災、電源喪失などの危険リスクが指摘されています。
市民の居住環境や地域の持続性を守ることが必要です。
財政問題
金沢市では、かつて、駅西区画整理事業、金沢駅東広場整備事業、金沢駅・武蔵北地区再開発事業、武蔵地区再開発事業、香林坊地区再開発事業と香林坊地下駐車場建設などに駅西から都心軸中心の大型再開発事業が行われてきました。
総事業費は、3200億円、金沢市は870億円を超える予算を投入してきました。しかも一部の床はまだ売れ残ったままで、金沢市が尻ぬぐいをして今でも税金を投入し続けています。
さらに、都市再生緊急整備地域に金沢駅東地域が指定されたことに伴い、開発事態への財政投入とは別に、本市独自の様々な支援が盛り込まれています。今後、事業進捗によって、その予算規模は限りなく拡大することが予想され、金沢市財政へ極めて大きく影響します。今後、市民福祉や医療、教育、防災などの基礎的予算が圧迫される懸念は拭えません。
地域経済・商店街
また、店舗出店やオフィスの進出に伴い様々な支援が行われますが、そのときに地域の商店街や事業所との連携や協調とは関係なく制度運用がされることになります。
全国展開する大手資本の「稼げるビル」「儲かるまちづくり」であって、地域経済の発展にはつながりません。9月議会で可決された中小企業・小規模企業振興条例制定の主旨とも矛盾しています
市長はこれらの開発について「老朽化した建物の更新やにぎわいの創出、地域活性化」を言いますが、それを望む声は、金沢駅・都心軸周辺に限らず市内各地に存在しています。金沢市全体の面積のうち、わずか0.13%にあたる59haのこの区域に対し、市民のためとは言えない事業に、巨額な予算が集中することに市民的理解は得られません。
わが党は、市民参加による、市民が住み続けられるまちづくりにこそ、未来があると考えます。よって、大手事業者を優遇しすすめられる都市再生緊急整備事業に基づく一連の支援事業には反対です。そもそも、国は地方に開発を促し自助努力で稼げという方針ですが、地方切り捨て政治の転換こそ必要です。基幹産業である農業や国内企業数99%以上を占める中小・小規模企業を支援することなどを地域経済再生の柱とすべきです。