金沢市議会6月議会 一般質問の全文
日本共産党金沢市議会議員 広田 美代
質問の機会を得ましたので、共産党金沢市議員団の一員として以下数点にわたり質問を致します。
①生活保護
1点目に生活保護行政について伺います。
芸能人の母親の、生活保護受給を、週刊誌が報じたことをきっかけに、生活保護に関する報道が、連日なされています。その一部で、あたかも扶養義務者による扶養が、生活保護適用の、前提条件であるかのような取り上げ方を、されているものがあります。現行の生活保護法上、扶養は保護の要件ではありません。小宮山厚生労働大臣も「扶養義務者からの扶養がなくても、保護を受けることはできる」と国会で答弁しています。
生活保護に限らず、明治時代にできた、現在の民法に定める「扶養義務」は、叔父や叔母ら三等親まで、扶養義務があるとされるものです。戦前の生活保護制度の前身である「救護法」では、この扶養義務を、絶対優先としていました。しかし、現在の生活保護制度では、夫婦間と中学生以下の子どもを除いては、扶養する意志がある場合に限り、扶養することとなりました。
このことを正確に捉えず、間違った報道を利用して、扶養義務の強化、基準の引き下げなどにより国家予算における生活保護予算を減額し、生活保護制度を改悪しようとする動きが広がっていることは、断じて許されません。
扶養義務の強化によるしわ寄せは、これまでかろうじて、貧困に陥らずにいた世帯までも、圧迫させることになります。とくに、少子高齢化のもとで扶養義務を負うのは若い世代です。政府は、子育てを応援すると言いますが、子どもの教育費などで、ギリギリの生活をしている世帯が親の扶養を強いられることになり、貧困の連鎖がさらに加速することになります。 また、誤った生活保護制度の解釈が広がることにより生活保護の利用を望む方々が制度の利用を自粛することも懸念され、ますます生活保護の申請がしにくくなり、その結果、餓死や孤立死を生み出すことにつながります。
本市では、国会答弁であった通り、扶養義務については生活保護の要件として、取り扱っていないと理解していますが、本市での扶養調査をどのように行っているのか。また、今回の事態を受けての今後の扶養調査についてのお考えをお答えください。
いまの日本では、生活保護を受けられるはずの人が利用できず、実際に保護を受けている人の割合を示す、補足率はせいぜい20%台と言われています。
市長もご記憶に新しいと思いますが、2005年九州市の餓死事件、今年に入って、札幌の白石区で姉妹が餓死した事件など、その他全国でこのような悲惨な事件が相次いでいます。
貧困率が上昇し、失業、非正規職員の増加、全国でワーキングプアが 1100万人を超える、今の時代に求められていることは、扶養義務の強化ではなく、生活保護行政の充実です。国会でも福祉事務所の人員体制の強化を求める意見があがっています。本市でも職員一人当たり100件近いケースを担当されていると聞いています。
今年度、体制強化のためにケースワーカーを2名増員しましたが、その後の体制についてお答えください。また法定基準ではケースワーカー一人当たり80ケースまでとされています。本市ではその数値に対してどのような方針を出されているのでしょうか。
職員の増員、受け持ち世帯数の適正化は、捕捉率の上昇はもちろん、適切なケースワークと、職員の研修機会の保障などによる資質向上にもつながります。改めて人員体制の強化を要望するものです。
先日からの報道により、生活保護を現に受けている人たちも、不安な日々を送っているでしょうし、また、生活に困窮し生存を脅かされている人たちが、生活保護を受給することに消極的になってしまっては、憲法25条に定める生存権が十分に保障されないこととなります。今一度、生活保護の役割を再評価し、生存権を広く浸透させることが必要と考えます。 生存権を保障するという観点から、生活保護業務に取り組む必要があると考えますが、市長の見解を伺います。
②国民健康保険
2点目は国民健康保険についてです。
若い方は、保険や年金に関心が薄いと言われることがありますが、先日20代前半のショップ店員さんとの会話の中で、「正職員なの?」という質問に対し、「いえ、まだバイトです」と。「医療保険は?」と聞くと、「あの高い国保です。ほんと高くて困ってます」というやりとりがありました。
今の若い世代の二人に一人は非正規雇用です。会社から保険証がもらえず国民健康保険だという方が少なくありません。高くて入れず無保険の方もいます。
「保険料が高い」このような市民の声が市長には聴こえてきませんか?今年度金沢市では保険料が大幅に値上がりをし、わたしたちのところには多くの声が届いています。
この度、市民の率直な想いを聞くため、金沢社会保障推進協議会が主体となる国保をよくする会で、4月12,13日、第3回目となる「国保119番」という電話相談を行いました。電話2台がなりっぱなしで、33件の相談が寄せられました。30歳から70歳台の、幅広い年齢層。無保険の方が5名、短期証の方も3名いらっしゃいました。内容は保険料に関する相談が21件と多く、その中で滞納している方が12名、申請減免の対象にもならない実態でした。
Aさんは、8年前から滞納しており、現在は無職なので兄弟からお金を借りてなんとか分納している。病気になっても医療費が払えないので病院に行けないとのこと。
Bさんは、仕事を辞めてから無保険、市役所に相談に言ったら1年以上遡って払ってくれと言われ加入できなかった。肺がんを指摘されているが治療は中断しているといいます。
このように、受診抑制や治療の中断など、深刻な事例もあり、保険料の高さが市民の命をも奪おうとしています。
本市では例えば4人家族で、夫が働き妻は主婦、未成年のお子さん2人いる年間300万円の所得の世帯で、年間の保険料は41万1240円と所得の1割以上です。他の医療保険のおよそ2倍です。
市長、高すぎる保険料を引き下げるつもりはないのでしょうか。また払えない方への制裁措置である、保険証の取り上げはやめるべきです。
今回の電話相談でも明らかになった通り、市独自で行っている保険料減免の制度が使いにくい、という声もあがっています。自己都合による退職や、雇用保険の給付を受けている場合の減免が必要です。
失業や収入減、生活困窮にともなう減免の、基準と実績を明らかにしてください。また、他都市のように減免制度の拡充は考えていませんか。たとえば秋田県内の多くの自治体は、生活保護基準を下回る場合も減免対象となっていると聴いています。
いよいよ来年度から、税法上の各種控除が加味されない、旧ただし書き方式に算定方式が変更になろうとしています。低所得者や多人数世帯、障害をおもちの方がいる世帯に、さらなる保険料の上乗せの可能性があります。払えない方がさらに払えないという悪循環、払える方も払えなくなるということすら招く恐れがあります。 このように、市民の負担が大きく変わる変更にも関わらず、市民へは未だお知らせのひとつもないまま、予算化だけがされているように見受けられますが、市民への負担増の影響と、旧ただし書き方式への変更の進め方について、どのように考えているのかお答えください。
そして今後、運営協議会でも、この旧ただし書き方式に対する議論がされると思います。3月議会でも触れましたが、運営協議会の議論の過程をぜひ市民に広く公開するべきです。運営協議会を、全て傍聴可能とすることについて、どこまでお考えになっているのかお答えください。
③子育て支援・子どもの健康について
続いて3点目の子育て支援と子どもの健康に関する質問です。
日本の出生数が、105万人と過去最低になったことが、先日報じられ、少子化の深刻さが浮き彫りになりました。少子化を表すもうひとつの指標である合計特殊出生率も、1.39と低水準のままです。
政府の白書に「少子化」という言葉が登場した92年以来、少子化と人口減少の、大きな流れに、歯止めがかかっていないのが現状です。 その理由は、国民の意識が変化したからではないと言われています。未婚者の9割が結婚を望み、未婚者・既婚者を問わず、希望する子どもの数の平均は2人以上。この意識は30年変わっていません。内閣府の調査では、希望する子どもの数まで子どもを増やさない理由として、既婚者の4割以上が「お金がかかりすぎる」ことをあげています。
非正規雇用の増大、低所得化での経済不安を、改善することはもちろんですが、かたちだけでなく、経済面、環境面から、きちんと子育て支援をする責任が自治体にも求められています。 現在、国会で議論となっている、総合子ども園や認定子ども園。保育園やご家庭など、子育ての現場は、毎日変わる報道に心配を募らせています。どちらにしても国が責任を放棄し、自治体に丸投げするようなやり方はおかしいと言えます。今でさえ課題を残す幼稚園や保育園それぞれの状況に応じた拡充策が求められます。
本市としてはこの国の動きの中、地域主権改革にともなう権限移譲により、現在施設基準などをつくられているところだと思います。本市では15%増しの定員運用をしてようやく待機児童はいないと言えるものの、本来入りたいところに入れていないのが実態ですし、体制強化や、保育料軽減、完全給食を望む声も強まっています。基準制定の進捗状況と、本市の保育を維持するために、どのような姿勢で臨まれているのかお答えください。
少なくとも、これまでの基準を下回らないものであることが現場や保護者からの切実な願いです。
また、障害のあるお子さんが保育所に入所、いわゆる統合保育に関してその現状をお教えください。現場からはさらなる加配措置を求める声が多く、拡充が必要かと思いますがどのようなお考えかお答えください。
次に、子どもの健康を守るうえで、お金のあるなしに関わらず病院へかかれる環境の重要性は言うまでもありません。子どもの医療費ついては、かねてから大きくふたつの要望が市民から寄せられています。ひとつは、現物給付、つまり窓口での支払いをなくしてほしいという要望、ふたつめは、対象年齢の枠を広げてほしいという要望です。市長自身が公約でかかげてきたものでもあります。
窓口無料については昨年の3月、6月と請願が石川県議会で採択されたほか、県内の本市を含む14市町議会が窓口無料を求める意見書を県に届けています。にも関わらず未だに県知事は態度を変えません。県民の声、県議会の決議、14市長議会の意見を無視することは地方自治・議会制民主主義の原則を逸脱しており許されないことです。一日も早く、県議会が採択した意見書を県がしっかり受け止め実行していただくことが大切だと思いますが、市長の見解を伺います。
2つ目の要望である年齢拡大についてですが、今年度現在19ある県内市町のうち、通院も入院も中学校卒業以上までとする自治体が14、金沢は下から2番目です。市長が公約で掲げられ、今でも自身のホームページにフルマラソンと同じ短期計画で表示がされている「中学校卒業まで医療費無料化」は出遅れています。段階的に引き上げていくという答弁が続いていますが、今一度市長のお考えを伺います。
④市営住宅について
4点目は、市営住宅についてです。
これまでも、なんどか取り上げてきましたが、依然として抽選倍率は高く、不況が続く中その役割が、ますます高まってきている状況です。昨年この分野でも地域主権改革に伴い、国から本市に権限が移譲され、今年度は本市独自の条例の改定を行うことになっており、整備基準や入居要件など市の姿勢が問われることになります。
まずは、管理戸数や応募倍率などの現状についてお答えください。
各住戸によって倍率にかなり差が広がっていますが、応募倍率が低くなってしまう住宅の理由と、課題、そして今後の対応計画についてお答えください。
わたしもいくつか市営住宅を拝見し、相談を受けたりしていますが、風呂釜や給湯機がない、カビや汚れ、老朽化や高層なのにエレベーターがないなど改修や建て替えを急ぐべきものが多くあります、これらハード面に対しては計画を前倒ししてでも快適な居住環境を早急に提供するべきだと思いますがいかがですか。
さらに、ソフト面では公営住宅の新設計画をしない、所得増による公営住宅からの追い出しなどにみられる誘導など国の公営住宅政策により入居者の定住が妨げられる、またコミュニティなどの課題がある地域が多いとも聞いています。
常に高倍率で人気があり、これまでも生活困窮者や低所得者に安価で良好な住環境を提供してきた市営住宅の役割は非常に大きいと言えます。その役割をどう評価しているのでしょうか。また地域主権改革に基づき、本市が独自条例化を検討している、その基本的考えと今後の取り組みについて、市長のご所見を伺い質問を終わります。