金沢市の除雪を福井市と比較してみた!

はじめに

 金沢市は、豪雪地帯対策特別措置法における豪雪地帯に指定されている。同じ北陸で中核市の富山市や福井市と同じ位置づけである。

富山市や福井市は市道の多くを市が除雪するにも関わらず、金沢市は4割と少ない。

これはあくまで、金沢市の政策の方針・結果であり、委託業者さんは委託された路線をしっかり除雪していたたいており、業者さんの力不足を言っているのではない。

そこで、市道の長さが似ている福井市へ視察で伺い、行政の除排雪の取り組みの調査を行い、金沢市行政と比較してみた。

金沢市の位置

金沢市は、豪雪地帯対策特別措置法における豪雪地帯に指定されている。

同じ北陸で中核市の富山市や福井市と同じ位置づけである。

金沢市の除雪率の低さ

富山市や福井市は市道の多くを市が除雪するにも関わらず、金沢市は4割と少ない。

福井市との比較

そこで、市道の長さが似ている福井市と比較してみました。

除雪延長がこれだけ違うのは、バス通りなど重要路線以外に、住宅地などの一般除雪路線をしっかり行っているからである。

福井市は建物があるところは除雪するという考え。消雪はコストがかかるとも。

参考)金沢市の除雪計画 福井市の除雪計画

※延長とは道路の長さのこと。

道路延長はほぼ同じで、委託業者数や機械数、オペレーター数はどうか。

※福井市は、市に関与する除雪機械、オペレーターの数字。一方、金沢市は毎年行っている業者さんへのアンケート結果。市に関与しているという条件までつけていない。

金沢市の方が上回ってすら見えるが、なぜ除雪率に差が出るのか。

議会での質疑はこうなっている。

2024年12月議会 広田質問と土木局長答弁

広田質問「金沢市だけなぜ市道の除雪率が低いのか」

土木局長答弁(要約)「本市の市道における除雪路線は過去30年以上4割程度で推移している。近年は少子高齢化や生活環境の変化で除雪ニーズが高まっており、地域除排雪活動補助制度などの支援を拡充してきた。しかし、建設業の担い手不足で業者やオペレーター確保が難しく、昨年度から育成費補助制度を設けて体制維持に努めている。そのため、除雪路線の割合を大幅に増やすのは困難な状況だ」

広田質問(要約)「金沢市は市道2,200kmのうち40%を除雪しているのに対し、福井市はほぼ同規模の市道2,186kmで85%を除雪している。出動基準は福井市が主要路線5cm、その他10cmで一律。体制面では、金沢市は業者205社・機械755台・オペレーター1,090人、福井市は業者257社・機械539台・オペレーター929人。規模的に大きな差はなく、金沢市も福井市のように除雪率を高められるのではないか」

土木局長「他都市と単純に比較はできないが、今年度から導入するGPS付き除雪管理システムで作業データを分析し、業者へのアンケートや福井市を含む他都市の情報も参考にして、効率的な除雪方法を研究していく方針だ」

福井市の取り組み

市道の除雪率85%を実現させている福井市の主な取り組みは以下である。

ブロック制

最重点除雪路線、歩道除雪路線、消雪路線を担当する企画直営班と、市内を7ブロックに分けて除雪業務を行う。

職員体制

降雪の状況に応じて2つの組織体制をとっている。

・除雪対策本部 279名 建設部を中心に90名 ほか180名 ブロックに60~70名

・道路雪害対策本部 328名

 いずれも24時間体制 4交代 4日に1回まわってくる 

委託業者への除雪機械の貸し出しやリース

除雪機械の市所有、民間からリースしたものを貸与、委託業者がもつ機械を借り上げるなどして業者の機械の維持管理負担をなくしている。

リース費用はおよそ100万円/台 ×124=1億2400万円

市所有、リース機械の貸し出しは無料で、借り上げは固定費を払う。当然、市の道路を優先して行う。

稼働費はリースか貸し出しかによって単価が違う。

「福井市除雪委託車」というプレートをつけて除雪している。

委託費

基本は、固定費+稼働費(時間)+待機費(出動したら6割、出動しなければ全額)

待機費は金沢市はない。

保険料は委託費に含まれる。

除雪機械購入の支援

市所有の機械の更新と共に、除雪協力企業が所有する機械の更新や新規購入に対し、購入費の一部を支援。市としては貸し出しも行っているが、民間所有を増やしたい。

例 1.3tトラクタショベル 最大300万円/台 H21からの制度 231台購入

耐用年数14年としている。

オペレータの確保 ※金沢市も始めた

除雪機械の運転に必要な免許の取得および技能講習の受講に対し費用の一部を支援。

R5年度から3年目 大型特殊 車輛・・技能 最大7万円×2

R5 17名 R6 12名 R7 13名(上半期)

公園などの活用で雪置き場の確保

雪捨て場も開設するが、公園等も活用して雪置場を確保する。

H30年度に緩和し、R6年度は115か所活用。

問題点は、フェンスが壊れたりごみが残ること。

市民雪置き場支援

住宅密集地で、市民が雪置き場として土地を提供した場合、補助金を交付。

空地や駐車場などの固定資産税と都市計画税の3か月分。

R6年度 25自治会 のべ51地権者 14,125㎡ 73万円分

雪捨て場の効率的な運営

市街地に近い雪捨て場については、一時的に昼夜間を問わない運営にすることもある。住民からの苦情もある。

日中の除雪

 基本は朝7時までにはだが、異常な降雪時においては日中でも作業を実施。H30年からR6年は2回。実施の際は、必要に応じ通行止めなどの規制を行う。

排雪

 交差点部は国県と連携し、市内100か所(市66か所、県34か所)の排雪作業を実施。

 また、それ以外の交差点や堆積スペースがない場合などは業者の申し出で実施する。警察などを連携し通行止めして行う場合もある。

県との連携、除雪協力企業の相互連携

異常な降雪時において、県との連携や作業が遅れているエリアについては、周辺やほかのエリアの企業による応援を積極的に行い、早期の除雪完了を目指している。

市民の除雪協力

除雪路線とは別に自治会等にあらかじめ協力をお願いしている市道路線がある。

76kmにもおよび、除雪路線をあわせれば、市道の88%の除雪となる。以下のような制度で行っている。

道路除排雪事業協力金(自治会等協力路線)

R6年度実績76.1㎞(除雪路線以外の数字)。自治会等協力路線を、除雪計画とは別にあらかじめ定めて、実施に対し協力金を交付する。一斉除雪の指示があったときに交付対象。一斉除雪はHPで表示される。道路幅が基準ではなく、業者機械が入りにくい郊外の旧集落などが多い。原則市道。

mあたりの単価で、業者でも住民が行ってもいい。市の補助で買った小型除雪機械を使っても協力金が出る。

※金沢市にも自治会等への除雪補助金はあるが、あくまで業者さんに委託した場合に限られる。自治会主体で行った場合はむずかしいか。

市民協働除排雪補助金

警戒体制時(積雪90㎝以上)に市が指定した期間内において、自治会が行う除雪に支援。上限5万円。H30年からだが実績なし。

小型除雪機械購入補助 

自治会等を対象に自治会等協力路線や歩道などの除雪に協力をしてもらう目的で補助。

補助率1/2、限度額80万円/台。

※金沢市にもあるが、地域除排雪活動費補助を使っての除雪は小型除雪機械を使っても対象にならない。あくまで業者委託が前提。

歩道除雪

48.2㎞ 原則として学校から半径500m程度の内の主要な通学路、総合病院周り、市内中心部を対象。歩道の積雪が20㎝以上で天候が安定した時に実施。

実施業者としては、車道を行う業者も造園業者もいる。16社は純粋に歩道のみ行っている。市所有の機械をわたしている。

除排雪費・財源について

厳密には道路除排雪費と、公共施設など含めた除排雪費があるが、まずは道路除排雪費だけをみていく。

R6年度見込み

道路除雪費 23億4823万円 うち業者への委託料 16億2383万円  

R6年度は一斉除雪は5回入っている

※金沢市 R6年度 道路除雪に関わる費用 16億1343万円

財源 国庫補助(社会資本整備交付金 重要路線分のみ)

地方交付税 市道の全体に対して国からくる

特別交付税 道路除雪にかかった経費―その年の地方交付税

国からの除雪費の説明をもとに、除排雪費全体で考えると

収入

普通交付税(市道全体+小中高で算定)

特別交付税(2月中旬までのかかった経費+3月は過去4年間の平均)×1/2

国補助(雪寒補助、防災安全交付金)

支出

除排雪全体(道路、公共施設)

R6年度 金沢市

道路だけで見ると・・16億1340万円

除排雪全体・・20億6530万円

普通交付税・・9億2千万円

特別交付税・・6億3千万円

道路国補助・・2億6400万円

計・・18億1300万円

道路だけだと足りるが、除排雪全体でみると不足しているか。

市民への広報

苦情は、「除雪がまだ来ない」「不十分」「かたまりがある」などが多い

ほくつうのシステムで、除雪路線やその路線エリアについて、「除雪待機」から「除雪中」などHPやSNSなどで公表している。広報するだけでなく、ブロック担当の職員が巡回、対応することもある。

まとめ

福井市は、市の責任で市道の85%の除雪を実現しており、自治会協力路線を含めれば88.5%にもなる。85%の分については建物があるところは行うという考えで、金沢市の幹線道路を中心に4割を行うという姿勢を上回る。85%を実現できている取り組みとして、職員体制について、道路課だけではない多くの職員が配置され、4交代24時間体制のもとで、市内を7つのブロックにわけて指示・除雪の実施・市民からの情報処理などを行っていること。また実施はほとんどが業者だが、機械の維持が困難と言われる中で、除雪機械の貸し出しまたは借り上げ、除雪機械の購入補助、オペレーター資格取得補助を行いその負担を減らし、また委託費においても待機費用を出すなど除雪に関わってもらう条件を揃えている。そのようなことから85%の除雪率を実現できている。

また、除雪のしやすさという点では公園などを雪置き場に活用、公的な排雪場については24時間稼働、日中の除雪の場合は通行止めも可能としている。

さらに住民からの協力についても、雪置き場の提供を補助金を用いて行っていることや、自治会協力路線については業者でなくても市の補助を受けて購入した小型除雪機で住民自らが行った場合も補助金を出す仕組みになっている点が金沢市は異なり、活用しやすいのではないか。

住民からのご意見や苦情は多いという。しかし、少なくとも市の除雪路線が自宅前なのかどうかは周知されており、その業者がいつ来るのかという質問や、雪の壁をどうにかしてほしいというお声が多いようだ。金沢市の場合は、市の除雪路線か地域が独自で入れている除雪かもわからないまま、市や業者さんへ五月雨にご意見がある様子。まずは、福井市のように、ホームページ上でPDFではなくアクティブな形で除雪路線と作業状況がわかるようにすべきであるし、市からの委託業者の機械はすべて「福井市除雪委託車」というプレートをつけているように、金沢市でも表示して住民の混乱をなくすべきだと考える。さらに、苦情に対し、ブロックごとの職員が個別のパトロールや対応をすることもあり、住民の安心につながっていると考える。

除雪の財源という点については、まず国から地方交付税として市道の全体に対して除雪費用が積算されていることや、シーズンごとに実際にかかった除排雪費については特別交付税も出され、幹線道路については国庫補助もある。よって福井市の場合は財源はそれらを使ってカバーしている。

金沢市は財源の問題で4割にとどまっているとははっきりは言わないが、職員体制や除雪機械のあり方、業者さんへの委託、町会等への地域除排補助等についてもっと費用をかけることができるのではないだろうか。そして、委託業者やオペレータが足りないというが、まずは福井市のように市に関わる機械数やオペレータ数を掴むべきであり、もしそれが少ないのならば業者が冬季はどのような動きをしているのかなども把握するべきだと思う。業者さんの数や力次第なのであるならば実情を調査し、市の除雪路線にご協力いただくにはどのような取り組みがさらに必要なのか検討してほしい。

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