金沢方式とは?公民館・消防分団の地元負担の問題点と、これから必要な見直し

金沢市の公民館や児童館、消防分団の施設整備などにあたって、地域住民が費用の一部を負担する「金沢方式」。

長年続いてきた金沢独自の仕組みですが、人口減少や高齢化が進むなかで、住民の負担や町会の運営に与える影響が問題になっています。

「市の施設なのに、なぜ住民がお金を出さなければならないの?」
「町会を通じて求められるお金は、法律で決まった負担金なの?」
「地元負担の見直しは、どこまで進んだの?」

こうした疑問に答えるため、これまで金沢市議会で取り上げてきた内容をもとに、金沢方式の仕組み、問題点、これまでの見直し、今後必要な対策を整理します。

1.金沢方式とは?

金沢方式とは、公民館・児童館などの運営や施設整備、消防分団の施設整備やポンプ車の購入などに際して、地域住民が費用の一部を負担する金沢市独自の仕組みです。

対象となる事業によって、市が直接実施して地元から寄附を受ける場合と、地域の団体が事業主体となり、市から補助金を受けて整備する場合があります。

例えば、公民館を建て替える場合、地域で建設委員会などを立ち上げ、町会を通じて各世帯からお金を集めるケースがあります。消防分団の施設整備やポンプ車の購入などでは、地域の団体が事業を行い、補助金でまかなえない部分などを地元で集める仕組みがとられてきました。

このように、地域住民が費用を負担することが前提になっている点が、金沢方式の大きな特徴です。

詳しい仕組みについては、こちらの記事をご覧ください。

2.金沢方式では、どのくらいの地元負担が発生しているのか?

2024年度に行われた金沢方式のあり方検討では、公民館の運営費・整備費について、地元負担の金額が過去20年間で約47億円、今後20年間では約80億円にのぼるとの試算が紹介されました。

公民館だけでも、非常に大きな金額です。

公民館や児童館は、地域住民の活動や交流を支える大切な施設です。消防分団の施設やポンプ車も、地域の安全を守るために欠かせません。

こうした公共性の高い施設や設備について、住民が多額の費用を負担し続ける仕組みでよいのか、改めて考える必要があります。

※上記の金額は、公民館の運営費・整備費に関する検討時の試算です。現在の実績額や、すべての施設・事業を合計した金額ではありません。

関連する議会質問はこちらです。

3.金沢方式の何が問題なのか?

金沢方式を見直す必要があると考える理由は、大きく4つあります。

① 市の施設なのに、住民が費用を負担している

公民館や児童館、消防分団の施設などは、市民生活や地域の安全を支える公共性の高い施設です。

しかし金沢方式では、整備費などの一部を地元で集めることが前提となっています。

地域の自主性や住民参加を大切にすることは重要です。一方で、公共施設を整備・維持するための費用を、地域住民にどこまで求めるべきなのかは、別の問題として考える必要があります。

住んでいる地域や町会の財政状況によって、施設整備にかかる負担や住民の負担感に差が生じることも懸念されます。

② 「負担金」と呼ばれていても、法律に基づく負担金とは異なる

金沢方式では、地域から集められるお金が「地元負担金」などと呼ばれています。

しかし、2024年の議会質問や市の説明によると、金沢方式について定めた条例や要綱はなく、公民館・児童館の整備にかかる地元負担相当分は、市の歳入上「寄附金」として扱われています。

ここで重要なのは、法律に基づいて徴収する負担金と、住民からの寄附は同じものではないという点です。

地方財政法第4条の5は、自治体が住民に寄附金を割り当てて強制的に徴収することを禁止しています。

市は、地元の要望と合意に基づく自発的な寄附であり、強制には当たらないとの立場です。一方で、広田みよは、実際には町会を通じて各世帯に金額が割り当てられ、住民が断りにくい状況が生じていないかという問題を指摘してきました。

制度上「寄附」とされていることと、住民が実際にどのように受け止めているか。この両方を確かめることが必要です。

詳しくはこちらをご覧ください。

③ 住民の経済状況にかかわらず、負担を求められることがある

町会を通じて一定額を集める場合、生活に余裕のある世帯も、年金や限られた収入で暮らす世帯も、同じように負担を求められることがあります。

高齢者世帯などの負担を軽減したり、町会の積立金を使ったりする対応も考えられますが、その方法は地域によって異なります。

町会は行政機関ではないため、各世帯の経済状況を把握して、所得に応じた負担を決めることには限界があります。

本来、公共サービスの費用をどのように負担するかは、税金による公的な仕組みも含めて考えるべきです。地域の事情や個々の世帯の経済状況によって、必要な施設を整備できるかどうかが左右されることは避けなければなりません。

④ 町会の負担が増え、地域コミュニティに影響する

町会は、防災や除雪、住民同士の交流など、地域の暮らしを支える重要な役割を担っています。

その町会が、公共施設の建設などに伴う資金集めや住民への説明、集金に追われると、役員の負担が増えてしまいます。

また、負担するかどうかをめぐって住民間で意見が分かれたり、町会活動への参加をためらったりすることも懸念されます。

金沢市自身も、人口減少や少子高齢化、町会加入率の低下などを背景に、地域コミュニティを取り巻く環境が変化していると説明しています。

地域のつながりを守るためにも、町会の善意や努力だけに頼るのではなく、行政が担うべき役割を明確にすることが重要です。

4.金沢方式の見直しは、どこまで進んだのか?

金沢市では、金沢方式のあり方を検討するための懇話会が開催され、地元負担の見直しが議論されました。

その後、市負担と地元負担の割合などについて見直しが行われ、2025年度からは公民館などの地元負担割合について、従来の4分の1から5分の1へと軽減する変更が実施されています。

ただし、負担割合を見直すことと、地元負担そのものをなくすことは別です。

2026年6月議会で私は公民館運営費の地元負担が実際に減ったのか、また、物価高騰によって施設整備費が増えた場合に住民負担が膨らまないかを質問しました。

市側は、公民館運営費について各地区の収支決算や予算を精査中であり、地元負担額は各地域の実情に応じて決まるため、負担割合の変更による影響は一様ではないと答弁しています。

また、材木消防分団の機械器具置き場については、資材高騰などで工事が進まない問題を取り上げ、市が予算と事業実施の両面で責任を持つよう求めました。市長は、消防分団施設の整備方法について、地域の意見も聞きながら引き続き研究課題とすると答えています。

つまり、負担割合の見直しは進んだものの、実際に各地域の負担がどの程度軽減されたのか、施設整備を市の責任で進める仕組みに変わるのかは、引き続き確認が必要です。

関連する記事はこちらです。

5.これから必要な対策は?

金沢方式の問題を解決するには、単に地元負担の割合を少し下げるだけでは不十分です。公共施設の整備・運営について、市がどのような責任を担うのかを明確にし、地域住民の負担を軽減する仕組みを整える必要があります。

① 公共施設の整備費は、市が責任を持って予算を確保する

公民館や児童館、消防分団の施設などについて、老朽化の状況や地域の必要性を踏まえた整備計画を作り、市の責任で計画的に整備を進めることが必要です。

地域が費用負担を了承しなければ整備が進まないという状態を避け、どの地域でも必要な公共施設を利用できる仕組みを目指すべきです。

② 地元負担の実態を調査し、わかりやすく公表する

負担割合を変更しただけで、各世帯の負担が実際にいくら減ったのかはわかりません。

公民館や児童館の運営費・整備費、消防分団の施設やポンプ車などについて、事業ごとの総額、市の負担額、地元から集めた金額、各世帯への負担の求め方などを調査・公表することが重要です。

特に、物価高騰によって整備費が増えた場合に、住民の負担が増えていないかを確認する必要があります。

③ 寄附は本当に自由意思に基づくものにする

寄附を募る場合には、法律や条例に基づく負担金ではないことを明確に説明し、寄附するかどうかを住民自身が判断できるようにする必要があります。

寄附をしないことによって、公共施設の整備や利用で不利益を受けることがないようにすることも大切です。

また、町会役員に資金集めや個々の世帯への説得を過度に負わせない仕組みが求められます。

④ 市民や町会の意見を幅広く聞き、制度を根本から検証する

金沢方式を見直す際には、町会連合会などの関係団体だけでなく、実際に負担を求められている住民、町会役員経験者、若い世代、転入者など、幅広い市民の意見を聞くことが必要です。

制度の歴史や地域のつながりを尊重することは大切ですが、昔から続いているという理由だけで、今の暮らしに合わない仕組みを維持するべきではありません。

市民の意見を踏まえ、公共施設の整備・運営における行政と地域の役割分担を改めて整理する必要があります。

6.金沢方式について、もっと詳しく知りたい方へ

金沢方式については、これまでの議会質問や解説記事、学習会資料を公開しています。制度の仕組みや市の答弁、見直しの経過を知りたい方は、ぜひご覧ください。

制度の仕組み・地元負担について

議会での質問・市の答弁

学習会の資料

おわりに――公共施設を支える責任を、地域だけに負わせないために

公民館や児童館、消防分団の施設は、地域の交流や防災を支える大切な公共施設です。

地域住民が主体的に活動することと、公共施設に必要な費用を住民が負担することは、分けて考えなければなりません。

人口減少や高齢化、物価高騰が進むなか、町会や個々の世帯に負担を求め続ける仕組みが、これからも持続可能なのかを検証する必要があります。

私は、金沢方式について、地元負担の実態を明らかにするとともに、市が公共施設の整備・運営に責任を持ち、住む地域によって市民の負担やサービスに大きな差が生じない仕組みへと見直すことを求めていきます。

引き続き、市民のみなさんの声を聞きながら、議会での質問や行政への働きかけを通じて、誰もが安心して暮らせる金沢を目指して取り組んでいきます。

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